ユーモアのあるものを作りたい
Q:撮影は勝手知ったる芦澤明子さんですが、芦澤さんとはどのように撮影を進められましたか。
沖田:今回の話は3つの話があったので、いろんな作戦ができるような、やりがいのある題材だったと思います。お互い基本的な話はしますが、僕の「こういうのがいい」という偏ったものに関して、芦澤さんがすごく執着してくださるというか、「沖田さん、これ好きでしょ」みたいな感じで突っ込んで撮ってくれる。もう、言わなくても芦澤さんがやってくれるような印象がありますね。本当は言った方がいいんですけど、付き合いも長くなってきているので、お互い照れながらやっています。芦澤さんは、監督がやりたいことを一生懸命考えながらやってくれている感じがある。今でもそんな気持ちで芦澤さんを見ております。

『さとこはいつも』©2026 「さとこはいつも」製作委員会
Q:デビュー20周年となりますが、20年前と今でご自身の映画作りに変化はありましたか。
沖田:20年前は自主制作で撮った『このすばらしきせかい』(06)という72分の長編を初めて映画館にレイトショーでかけているような状態でした。その時は実家で何度も撮影していましたね。ものすごく変わったようで変わってない、なんだか分からないですね(笑)。
周りが少しずつ見えるようになってきた分、気を遣うようになりました。昔は無知な方が強いというか、気づかないから平気でわがままが言えて、それが強さだったんです。その強さは良いのか悪いのか分かりませんが(笑)。今は「これをやったら大変だな」とわかってしまう分、自分が少し弱くなるのですが、もう20年経ってしまったので、また違う戦い方、違う自分の超え方をしなくてはいけないなと思いながらやっています。
ただ、題材としてコメディやユーモアのあるものを作りたいという根底はずっと変わっていません。題材が変わらないで、方法とやり方が変わっていくという感じですね。

監督/脚本:沖田修一
1977年8月4日生まれ、埼玉県出身。短編映画の自主制作を経て、長編作品『このすばらしきせかい』(06)でデビュー。『南極料理人』(09)が大きな話題となり、2009年度新藤兼人賞金賞を受賞し国内外で高い評価を受ける。また、『横道世之介』(13)では、第56回ブルーリボン賞最優秀作品賞のほか、第5回TAMA映画賞最優秀作品賞などを受賞。その他の監督作品に、『モヒカン故郷に帰る』(16)、『モリのいる場所』(18)、『おらおらでひとりいぐも』(20)、『さかなのこ』(22)、ドラマ「0.5の男」(23/WOWOW)、「探偵さん、リュック開いてますよ」(26/EX)などがあり、星野源や乃木坂46のMVも手掛けている。
取材・文: 香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
撮影:青木一成
『さとこはいつも』
全国公開中
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2026 「さとこはいつも」製作委員会