© 2026 ナギダイアリー・パートナーズ (スターサンズ/八朔ラボ/ワンダーストラック) / Survivance / Momo Film Co.
『ナギダイアリー』深田晃司監督 意味もなく続いてしまう日常にこそ、本質がある【Director’s Interview Vol.591】
そこに生きる人たちを、偏見で斬らないように
Q:「東京ノート」の元になった『東京物語』も含め、離婚によって家族としての人間関係が断たれる感覚は今も存在しているとは思うんですが、昭和的価値観の名残りでもある気がします。
深田:非常に家父長制的ですよね。昔ほどではなくなったといっても、今でも意外とみんなどこかにそのバリアはあるんじゃないかと思います。特に、別れた夫のお姉さんとの関係性ってことになると……。
Q:そういう価値観に対しての意義申し立てや、どこか窮屈でバカバカしいものであるみたいな感覚はありましたか。
深田:自分としては窮屈であるとは思ってはいます。ただ、家父長制を悪として描きたいというより、そういった環境で生きてきた人間、生きざるを得ない人たちの姿を描いていくことのほうが大事かなとは思っていました。
映画を作ると、最終的に自分の視点はどうしても出てきますし、あるべきだと思います。実際『ナギダイアリー』にも、家父長制に対して強い疑問を抱く立場からの視点はあります。でも、その善悪をジャッジしてメッセージとして伝えるのは映画で自分がしたいことではないとも思っているんです。

『ナギダイアリー』© 2026 ナギダイアリー・パートナーズ (スターサンズ/八朔ラボ/ワンダーストラック) / Survivance / Momo Film Co.
今回、奈義町を舞台に映画を作ろうと決めた以上、当然「地方における家父長制」が世界観のベースにはなってくるわけです。そこを見つめなければ作る意味がないと思いながら作り始めるんですけど、そこに生きている人たちの悲しみや喜びや覚悟みたいなものを、都会の人間の偏見でバッサリ斬るみたいなことはしないように気をつけようと思っていました。
図らずも、『ナギダイアリー』は前作の『恋愛裁判』とほぼ並走して作っていたんですが、両方とも自分にとってアウェーなものを描いている感覚がありました。『恋愛裁判』ならアイドル業界だったり、『ナギダイアリー』だと東京生まれ東京出身の自分が地方の生活を描くことだったり。自分の中にある偏見とか思い込みみたいなものはどうしたってゼロにはなりませんが、それを無自覚に野放しにして出してしまわないように気をつけていくことが求められた作品だとは思いますね。
Q:それができるのが凄いと言いますか……。無自覚なことを自覚するのってほとんど不可能じゃないですか。
深田:まあそうですね(笑)。自分でも完全には無理だと思うんですよ。でも私自身が、自分が生まれ育ってきた環境に影響を受けて、無意識に内面化していることがあるということ、それ自体を意識できているかどうかで、描くべきモチーフに対する向き合い方も変わってくると思ってます。その向き合い方も決してスマートなものじゃなく、ひたすら取材を重ねるだとか、丁寧に話を聞いていくっていう作業が中心で、そういったことを積み重ねながら作っていった感じです。