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『ナギダイアリー』深田晃司監督 意味もなく続いてしまう日常にこそ、本質がある【Director’s Interview Vol.591】

© 2026 ナギダイアリー・パートナーズ (スターサンズ/八朔ラボ/ワンダーストラック) / Survivance / Momo Film Co.

『ナギダイアリー』深田晃司監督 意味もなく続いてしまう日常にこそ、本質がある【Director’s Interview Vol.591】

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家父長制と、土地を守るための精神性



Q:客観性を担保するために、第三者に意見を仰いだりはしましたか。


深田:それは取材の段階でかなりしていたと思います。奈義町に延べ10カ月以上は滞在して、一応はそこに暮らしながら、いろんな人の話を伺っていく作業をしていました。地方の生活以外では、今回はいわゆるクィア描写に関しても当事者の方に取材をしたりしました。


また、LGBTQ+インクルーシブディレクターのミヤタ廉さんにも入っていただいて、脚本の段階からチェックしてもらっています。スタッフ・キャストへの研修もやってもらいました。中学生2人が自分の性自認を自覚していくという話なので、未成年だった俳優2人に対しても個別に研修をしてもらいました。


Q:取材したり脚本を作っていく中で、思っていた地方のイメージと違っていた部分があれば教えてください。


深田:まず、家父長制はもちろん東京にも残っているし、日本の社会全体にあると思うんですけど、やっぱり地方に非常に強く残っているということは感じました。いろんな方を取材して、とてもいい出会いがありましたし、いろいろ面白い話も聞けたんですが、中でも印象的だったのが、中学生の男の子が進路について「僕はお姉ちゃんや妹みたいに自由にはできない」と話してくれたことです。


お姉ちゃんが高校生で妹さんが小学生だったんですけど、「将来どんな仕事をしたい?」と聞くと、長女の方は「自分もお母さんと同じ分野の仕事に就きたい」と言うんです。小学生の妹さんはお姉ちゃんに憧れていて、お姉ちゃんと同じ道に行きたいと話してくれたんですけど、中学生の長男の方は「長男だから、家を継がないとといけない」って当たり前のように言うんです。中学生が、自分は家を継ぐ長男なんだとすでに自覚していることが、自分には結構な衝撃でした。



『ナギダイアリー』© 2026 ナギダイアリー・パートナーズ (スターサンズ/八朔ラボ/ワンダーストラック) / Survivance / Momo Film Co.


一方でこの映画は、寄子という独身で1人暮らしを続けている女性の話なんですが、当然地方だと「結婚」というものを強く求められる。話を聞かせてもらうと、やっぱり結婚していないというだけで奇異な目で見られるところがあったりする。あと、映画でも出てくる話題ですが、男の子は「将来このお墓に入るんだぞ」と親から言われて育つ。でも女の子は「あんたはこの中に入れないんだよ、女の子だから」みたいに言われたという話を聞きました。家父長制の抑圧やストレスは女性に対して一番強くのしかかると思うんですが、男性もそのプレッシャーの中で生きているんだと実感しました。


しかし都会的な視点だけだと、地方をときに過剰に排他的でクローズドな空間に捉えてしまう。それもある種、都会的な感覚で地方を描く際の定番イメージですよね。極端に走ると横溝正史の「八つ墓村」的な、因習村みたいな世界観になっていく(笑)。


でも話を聞いていくと、例えば奈義町はもともと水利がないところだったそうなんです。田んぼを作るにしても、水の利便性がよくない土地だったから、江戸時代に開拓した人たちが自分たちのために溜池を作り、畑や田んぼに水を引けるようにした。そうなると誰かが溜池を管理しなくちゃいけない。修繕にしても管理にしても、ずっと地元に住んでる人たちが請け負ってきたわけです。そこに突然「都会から移住してきました!」って、土地を守る責任を負ってこなかった人たちがポンと入って来ても、やっぱりそこにはある種の軋轢が生まれてしまうとは思うんです。地元の方々には畑や土地を守ることがすごく大事で、先祖からの土地を守らなければいけないという精神性を強く感じます。


今、奈義町では農業をメインにして稼いでる人って多くはないそうです。みんな何かほかの仕事を持っていて、畑では家族や親戚が食べる分だけを作り続けている。別のお仕事で食べていけるのであれば、もう畑はやらなくてもいいじゃんって思いそうなもんですけど、先祖からの土地を受け継ぐのは精神的なことだけではなく、畑をやめてしまった瞬間に、土地が荒れ始めて虫が出たり、山から獣が降りてきたりして近隣に迷惑をかけてしまう。地域のコミュニティを守るためには簡単に畑をやめるわけにはいかないから、どうしても継ぐ人が必要になる。となると、そこにはやっぱり家父長制というものが非常にフィットしてくるんですね。


もう卵が先かヒヨコが先かはわからないですけど、先祖代々受け継いで家を守るという形が土地にフィットしている以上、都会的な視点から閉鎖的な悪いものだと簡単には言い切れないってことも見えてきたんです。だからといって必要悪と割り切るべきでもない……、って、この話、長すぎますね。適当に省略してください(笑)。





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