膨大な資料の取捨選択
Q:前作『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』に続き、関係者へのインタビューとアーカイブ映像で映画は構成されています。この手法に手応えは感じますか。
相原:ナレーションを入れるのが嫌いなんです(笑)。ナレーションって、結局のところ「補完」ですよね。映っていないことや喋っていないことをナレーションで説明するのは、演出としては負けを認めているようなもの。それがまず嫌だなと。
基本的な構成としては、ある人の言葉を聞いて、それを受ける形でまた別の人の言葉を繋ぎ、ダイアローグを積み重ねていきます。そうすることで多面的な表現ができていく。その手法をずっと続けています。
Q:前作と比べると、今回はアーカイブ映像が膨大にありそうですね。
相原:すごい量でしたね。市販されているビデオ作品などもありますし、素材の量は本当に膨大でした。
Q:その膨大な資料のどこから手をつけたのでしょうか。
相原:基本的には「映画の中で使いたい曲」が軸になります。例えば、76年の「スローバラード」の映像が出てきますが、あれはかなり貴重な素材なので「これは使わざるを得ない」となる。基本的にはそういった“マストな”素材を見つけていきました。
また、今回は「企画チーム」を作ったんです。清志郎さんの事務所のベイビィズの方々、ユニバーサルミュージックの担当者、あとはイベンターの方など、清志郎さんをよく知る6人ぐらいでチームを組み、そこで企画を詰めていきました。例えば、そのメンバーに『トランジスタ・ラジオ』だったらどの時期のライブ映像が一番良いと思うか?とアンケートを取り、それぞれが薦める映像を見て、「じゃあ今回はこれでいこう」と。そんな形で決めていきました。

『愛し合ってるかい? 忌野清志郎が教えてくれた』©2026 Kiyoshiro Movie Project
Q:膨大な素材がある中で「これも見せたい、あれも入れたい」という葛藤があるかと思います。そこの取捨選択はいかがでしたか。
相原:それも大変でしたね。映画として2時間前後に収めなくてはいけないという大人の事情がありますから。削ったエピソードもかなりありますし、丸ごと無くなってしまったコーナーもあります。例えば、竹中直人さんは映画本編ではそこまで長くは話されていないように見えますが、実は、竹中さんが監督した映画『119』(94)で清志郎さんが音楽監督を務めて、日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞した話や、竹中さんの映画『サヨナラCOLOR』(04)に清志郎さんが出演された時の裏話など、他にもたくさん語っていただいていたんです。編集までしたのですが、どうしてもハマらなくて…。
あとは、スティーヴ・クロッパーさんですね。「Memphis」というアルバムや、生前最後のアルバム「夢助」を共同プロデュースされた方です。お話は伺うことはできたのですが、やはりハマりきらずカットせざるを得ませんでした。
だからといって3時間の映画にするわけにもいかない。映画である以上は仕方ないですね。でも実は、映画の公開日にこの映画の公式本が出版されるんです。その内容の大半は、映画に収まりきらなかったインタビューを収録した構成になっています。今の竹中さんのお話なども全部ノーカットで入っています。たくさん話していただいたのに使えないのは、やっぱりもったいないし相手にも失礼ですしね。