語り継ぐ・歌い継ぐ・創り継ぐ
Q:2025年の「SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2025」で、特別なステージを披露したスペシャルトリビュートバンド「SWEET LOVER SOULS」のパートも、リハーサルのシーンからしっかりと組み込まれています。そこの思いについてお聞かせください。
相原:映画のテーマとして「歌いたい歌を歌う」「夢」という2つを掲げましたが、それを具体的に映画に落とし込む上で3つのアプローチを用意しました。1つ目は関係者の証言による「語り継ぐ」。2つ目は若いミュージシャンたちによる「歌い継ぐ」。そして3つ目が、清志郎さんの娘であり、消しゴムハンコ作家の百世さんによる「創り継ぐ」です。
「歌い継ぐ」のパートは、今の若い世代のアーティストたちにやって欲しくて、各所に相談した結果、「SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2025」の1コマでやらせてもらうことになりました。実はSPACE SHOWERが開局して最初にかけた曲がザ・タイマーズの「デイ・ドリーム・ビリーバー」なんです。そんな縁もありました。
このパートでは、「今聴いても響く歌がある」ということを若い人たちに知って欲しかった。まさに「歌いたい歌を歌う」という自由な精神ですね。RCサクセションのサポート・メンバーだったサックスの梅津和時さんにも参加していただいたおかげで、「SWEET LOVER SOULS」は単なる楽曲カバーだけではなく、清志郎さんの「精神の継承」の場にもなったのではないかなと。

『愛し合ってるかい? 忌野清志郎が教えてくれた』©2026 Kiyoshiro Movie Project
Q:清志郎さんの娘の百世さんによる「創り継ぐ」のパートについてもお聞かせください。百世さんはこれまで清志郎さん関連のメディアにはあまり出ていなかったようですね。
相原:そうですね。消しゴムハンコ作家としての活動はずっとされていますが、清志郎さん関連のインタビューなどにはほとんど出ていませんでした。今回「創り継ぐ」として、清志郎さんの作品をモチーフに何か新しいものを創り出したいと考えた時に、「歌詞の本棚」という名曲を絵本にするシリーズがあることを知り、「これはいけるんじゃないか」と。それで百世さんに、「清志郎さんの詩と、百世さんの版画イラストを組み合わせて絵本を作りませんか」とプレゼンしたんです。それで本を作ることを前提として、出演していただくことになりました。そのメイキング風景と、イラストをアニメ化して本編に組み込んでいます。アニメーションディレクターは第一人者である伊藤有壱さんにお願いし、見事なアニメのミュージックビデオが仕上がりました。
Q:この映画を観て、清志郎さんの偉大さを改めて知ると同時に、「もうこの世にはいないんだ」という喪失感や寂しさを感じなかったことがとても印象的でした。
相原:結局は「じゃあ、どうすんだよ?」という問いかけなんです。清志郎さんが凄いとか昔は良かったとかではなく、今のこの時代を生きている僕たちが、自分たちの頭で考えなきゃいけない。そういうことが、映画を観た方への一つの結論として伝わるといいですね。

監督:相原裕美
1960年生まれ、神奈川県出身。コネクツ合同会社 代表、プロデューサー、映画監督。ビクタースタジオでレコーディングエンジニアを経験した後、1984年ビクター音楽産業(株)(現ビクターエンタテインメント)ビデオソフト制作室に異動、制作ディレクターとなる。オリジナルビデオ企画編成の傍ら、ミュージックビデオの黎明期と重なり、同社アーティストのミュージックビデオを演出・プロデュース共、数多く手掛ける。主なアーティストはサザンオールスターズ(メンバーのソロも含む)、ARB、Cocco、頭脳警察、フライングキッズ、永瀬正敏、斉藤和義など多数。その仕事の中で当時新人だった岩井俊二や下山天ら映画監督を見出した。2003年スペースシャワーミュージックアワードでプロデュースした「東京」桑田佳祐(演出:信藤三雄 脚本:リリー・フランキー)がVIDEO OF THE YEARを受賞。2004年同社映像制作部を設立し同部部長、お笑いレーベル『コンテンツリーグ』の設立や映画に参入。2009年同社退社後、2010年コネクツ合同会社を設立。監督作品は『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』『音響ハウス Melody-Go-Round』『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』。
取材・文:香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
撮影:青木一成
『愛し合ってるかい? 忌野清志郎が教えてくれた』
10月2日(金)新宿バトル9ほかにて公開
配給:東映ビデオ
©2026 Kiyoshiro Movie Project