令和の子どもたちと戦争
Q:令和を生きる子どもたちに終戦直後の子どもたちを演じてもらうことは、当時の状況を把握してもらうことからして難しそうです。撮影前にみんなで集まって、戦争が描かれた映画を観たり、戦争の資料館に行かれたりしたそうですが、子どもたちの理解はどのように変わっていきましたか。
西川:知識の部分では、今の令和の子どもたちは戦争に対して圧倒的な距離感があります。私たちの世代は親や祖父母が戦争体験者で、身近に話を聞く機会がありましたが、今の子どもたちは親が戦争を経験しておらず、祖父母とは一緒に暮らしていない環境も多い。学校教育の中で触れる機会も少なく、本当に戦争を知らず、距離があるのだなと。
とはいえ、私たちも当事者と同じような語り口で戦争を伝えられるわけではないので、自分の役の設定を解釈するためにも、この物語に書かれていることをみんなで一緒に勉強しました。知識のベースを入れて、親がいなくなった理由や疎開の意味さえ理解すれば、何かを失った時の喪失感などは、どの時代の子どもも同じように感じられる。心情を掴むことは難しそうではありませんでした。ただ、言葉遣いや遊び方、草履や裸足で走るなど、物理的な部分の訓練や練習は積み重ねが必要でしたね。それでも、演じながら登場人物の気持ちをきちんと掴み、「こういう風になりたくない」という思いでやってくれていたと思います。

茅野琴子役の小八重葵美さん
Q:琴子の置かれた状況はとても厳しく、男の子になるという選択も過酷です。かなりデリケートな部分でもありますが、琴子を演じた小八重葵美さんに伝えることは、本人の理解も含めて難しかったのはないでしょうか。
西川:小八重さんは小学校5年生の時に役が決まり、撮影時は6年生でした。撮影前にインティマシー・コーディネーターの浅田智穂さんから、「(性にまつわる場面の意味を)理解した上で演じさせた方がいいか、分かっていなくてもそう見えるように大人たちが工夫して撮るか、どちらが良いですか」と尋ねられました。親御さんの同意を得た上で、やはり分かってもらった上で演じた方がいいだろうと。
琴子はもちろん、彼女の体の変化を見守り、そういうシーンに立ち会う男の子たちにも、性教育の専門家に来ていただいて個別でレクチャーしました。性や肌の露出に関する場面に関しては、大人の俳優や演出家でも非常にセンシティブで恥ずかしい部分なので、そうした垣根を取り外すための相談相手が増えたのはありがたいです。葵美ちゃんも本当に覚悟は必要だったと思いますが、アドバイスやレクチャーを受けた上で、しっかりと理解しながら演じてくれたと思います。