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『わたしの知らない子どもたち』西川美和監督 子どもを描いて、大人を炙り出す【Director’s Interview Vol.595】

『わたしの知らない子どもたち』西川美和監督 子どもを描いて、大人を炙り出す【Director’s Interview Vol.595】

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“もたらされた”人権と平和



Q:子どもたちとの勉強会では監督自身も学びはありましたか。


西川:普通の子どもが疎開をしていく話を題材にした『うしろの正面だあれ』(91)というアニメ映画があって、助監督さんが「これがいいんじゃないか」と見つけてきてくれました。私たちの世代は、『火垂るの墓』(88)は子どもが観られる映画だと思っていましたが、あまりに可哀想な内容なので、今の子どもたちは観ていられないという声も多くなってきた。そこで、『火垂るの墓』は親御さんに見てもらって、(小八重)葵美ちゃんには良ければ一緒に観てくださいとお伝えしました。


悲惨さやストレートな反戦メッセージの前に、当時はどんな生活をしていて、それがどう変わっていったのか、その時子どもたちはどう感じたのか、それらを知る作品に出会う機会になりました。上の世代が作った作品や資料は視覚的にも参考になりますが、入手が難しいこともある。もっとアクセスしやすくなるといいなと、強く感じました。私は広島出身なので、原爆についての知識は無意識のうちに色々入れてきましたが、他の地域の空襲については知る機会がなく、東京にもこれだけ大きな被害があり、絶対に消し得ない火でも「残って消せ」と言われていたことなど初めて知りました。そういった資料に、都民や子どもたちがもっとアクセスしやすくなればいいなと。



『わたしの知らない子どもたち』©︎2026 K2 Pictures・AOI Pro.


Q:坂東龍汰さん演じる新聞記者の諸積が、日本国憲法の制定について琴子に知らせるシーンがとても印象的です。あのシーンに込めた思いについてお聞かせください。


西川:それまでとは違った価値観が書かれた憲法を、当時の日本人がどれだけ実感を持って「自分たちの憲法だ」と捉えていたのか。素晴らしい憲法だと思いつつも、敗戦によって半分“与えられた”ようなものでもある。自分たちが心から欲して勝ち取ったという意識が、長い間日本人にはなかったのかもしれません。最近、そう思うことがよくあるんです。


人権や平和も「もたらされた」感覚があり、自分たちが「勝ち取った」ものではないからこそ、これほど平和な国なのに色々なものが疎かにされてきたのではないか。新聞記者の諸積の台詞は正しいことではあるのですが、変わり身の早さというか、その変わり身の早さへの思慮の浅さみたいなものも、当時は多くの大人にあったでしょうし、子どもたちの中にも「え?」という思いがあっただろうなと思います。




西川美和監督、茅野琴子役の小八重葵美さんと


監督/原案/脚本:西川美和

1974年、広島県出身。早稲田大学第一文学部卒。2002年に平凡な一家の転覆劇を描いた『蛇イチゴ』でオリジナル脚本・監督デビュー。06年、対照的な性格の兄弟の関係性の反転を描いた長編第二作『ゆれる』を発表し、第59回カンヌ国際映画祭監督週間に出品。09年、僻地の無医村に紛れ込んでいた偽医者の逃走劇『ディア・ドクター』。12年、一組の夫婦の犯罪劇と女たちの生を描いた『夢売るふたり』を発表。15年、倦怠期の最中に妻を事故で亡くした小説家の心の葛藤と新しい交流を描いた小説『永い言い訳』を上梓後、16年、映画『永い言い訳』を発表。アジア、欧州でも公開される。21年、佐木隆三の小説『身分帳』を原案とした『すばらしき世界』(主演:役所広司)が、シカゴ国際映画祭外国語映画部門観客賞、第76回毎日映画コンクール日本映画優秀賞ほか。小説作品に、『ゆれる』(第20回三島由紀夫賞候補)、『きのうの神様』(第141回直木賞候補)、『その日東京駅五時二十五分発』、『永い言い訳』(第28回山本周五郎賞候補・第153回直木賞候補・2016年本屋大賞第4位)。エッセイに『映画にまつわるxについて』『遠きにありて』『スクリーンが待っている』などがある。本作の原案小説『わたしの知らない子どもたち』を8月に上梓。



取材・文: 香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成




『わたしの知らない子どもたち』

全国公開中

配給:K2 Pictures

©︎2026 K2 Pictures・AOI Pro.

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