日本映画界の鬼才・三池崇史監督が新たに放つ最新作『バッド・ルーテナント:トウキョウ』。アベル・フェラーラ監督、ハーヴェイ・カイテル主演によるカルト的傑作『バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト』(92)をベースに、欲望渦巻く新宿・歌舞伎町へと舞台を移し、最悪の刑事=バッド・ルーテナントを描き出す。
まさに三池ワールドの真骨頂とも言える本作。主人公の悪徳刑事・矢吹恭二役には、三池監督とは『クローズZEROⅡ』(09)以来の本格的なタッグとなる小栗旬。さらに、事件の鍵を握るFBI捜査官役にハリウッドからリリー・ジェームズを迎え、間宮祥太朗ら日米の豪華キャストが集結した。
三池監督はいかにして『バッド・ルーテナント:トウキョウ』を作り上げたのか。話を伺った。
『バッド・ルーテナント:トウキョウ』あらすじ
新宿・歌舞伎町で生きる刑事・矢吹恭二(小栗旬)は、裏社会に精通し、ドラッグやギャンブルに溺れ、ヤクザから命を狙われ、相棒殺しの噂まである最悪の刑事=“バッド・ルーテナント”。毎日借金取りに追い立てられる中、ヤクザを狙った連続猟奇殺人事件が発生する。捜査開始早々、遺体の入れ墨から被害者の身元を割り出し、一人の容疑者・石塚満(間宮祥太朗)を特定する矢吹。そんな彼の前に、アメリカから来日したFBI捜査官グエン(リリー・ジェームズ)が現れる。日本で行方不明となった次期アメリカ大統領の娘(リヴ・モーガン)捜索のため、グエンとタッグを組まされることになる矢吹。歌舞伎町で次々に起こる凶悪殺人事件とグエンが追う失踪事件。無関係に見えた2つの事件は、やがてこの街の最深部で複雑に絡み合っていく。正義と悪の境界線が崩れ落ちるとき、彼らが最後に目にするものは、絶望か、それとも――。
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作り続けてこそ生まれる“映画の奇跡”
Q:三池ワールドが炸裂していましたが、本作のような“裏社会”を描くことにはどのような思いがありますか。
三池:これはファンタジーです。リアルな抗争を描いているわけではなく、歌舞伎町を舞台にして、歌舞伎町そのものを描いた物語。歌舞伎町から生まれてくるものは、想像力を掻き立ててくれます。ベースとなった『バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト』は、ある意味非常にリアルな作品。今の時代にそれをただコピーするようなものを作ってもあまり意味がない。ただ、「矢吹のような人間が歌舞伎町で刑事をやっていたら、こういうことが起こるんじゃないか」と、そこさえ繋がっていればいい。そもそも時代も違い、国も違えば信じる神様も違うので、全く違った作品になってくる。それが自分にとっての正しいリメイクのあり方かなと。というか、リメイクという感覚でもないですね。ある意味で普遍的なんです。
一人ひとりに欲望があって目的がある。その中で勝者や敗者が生まれたり、勝ち負けではないところの物語ができてくる。それは、一番無理せずに表現できる方向で、僕らが低予算でやっていた頃から感じていること。そこはまさに日本独特のもので、世界の多くの人に届くよりも、世界の色々なところにいるごく一部の人に届けばいい。その人たちが共鳴して支持してくれれば、他の国とは違うものが生まれてくる可能性がある。映画には一作一作、奇跡みたいなものが必要で、それは作り続けていかないと始まりません。できればたくさん作ったほうがいいわけです。

『バッド・ルーテナント:トウキョウ』© 2026 BLT TOKYO LIMITED. All Rights Reserved.
あんなにすごい大谷翔平選手だって、1割ぐらいしか打てない時期があるわけです。でも、その1割が心地いいホームランであったり、すごいスリーベースであったり、あるいは内野安打でも構わない。その人なりの何か「ハッとする瞬間」が作れればいい。一方で、映画でそうしたものを作り続けていくのは、今はなかなか大変なこと。一つ二つ失敗するだけで、次のチャンスが巡ってこない。でもそれも本当なのかどうか、やってみないとわからないですよ。僕なんかは1つ2つどころじゃない失敗を重ねていますが、こうしてまだやっていますから(笑)。
今回非常に心地よかったのは、小栗旬の存在そのものでした。『クローズZERO』(07)で出会い、その後ゲスト的に出演してもらった作品はいくつかありましたが、本格的に仕事をするのは『クローズZEROⅡ』以来です。ずいぶん時間が経ちましたね。当時と今とでは全く違った魅力が彼にはある。その彼が、歌舞伎町を舞台にして、どうしようもない奴らばかりの中にいる。まさに僕のフィールドにいるわけです。そういった安心感があったからこそ、リリー・ジェームズなど色々な人たちを招き入れる余裕が生まれたのかなと。