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監督として矢面に立ち、初めて分かった楽しさとは『夜明け』広瀬奈々子監督【Director’s Interview Vol.16】

監督として矢面に立ち、初めて分かった楽しさとは『夜明け』広瀬奈々子監督【Director’s Interview Vol.16】


 是枝裕和・西川美和監督が立ち上げた制作者集団「分福」が満を持して送り出す新人広瀬奈々子監督。オリジナル脚本となる本作では、ごく普通の人々の人生を丹念に見つめながら、その奥にある複雑さ、人間の多面性を鋭く大胆な切り口で映し出す。今まさに初監督作を劇場に送り出す広瀬監督に話を聞いた。


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答えが見つけられないことも一つの答え



Q:いつ頃から映画の道を志されていたのでしょうか。


広瀬:子供の頃から母親の影響で映画はよく見ていました。その頃はハリウッドのアクション映画などが多かったのですが、自分はどんな映画が好きなんだろうと色々と探すようになったんです。そこからさらに、何らかの形で映画に携われるといいなと思うようになりました。


 高校生ぐらいの時には、ヴィム・ヴェンダースとかジム・ジャームッシュとかが好きで、結構そういったオフビート系の映画にハマっていました。これなら自分で撮れるかもしれないと、ちょっと血迷ったことを思ってしまいまして(笑)、その後、美術大学の映像学科に通いだしてからは、ジャ・ジャンクーとかイ・チャンドン、ホウ・シャオシェンとか、そういった監督の映画を見るようになっていきました。


Q:そして今回、初監督作として商業映画デビューされたのですが、監督するに至った経緯を教えてください。


広瀬:そうですね。この企画自体が非常によかった。ということではなく(笑)。


Q:ではなく?


広瀬:はい。2年ほど前に演出した老人ホームのWEBCMが、是枝さんにとても評価してもらえて、早く映画を撮りなさいと言われまして、そこで2本プロットを書いて、そのうちの1本が採用されました。


Q:映画の内容は、いわゆる市井の人々を描いた普遍的なドラマでありつつも、映画的な面白さを随所に感じました。例えば、小林薫さん演じる哲郎たちの普通の生活の中に、柳楽優弥さん演じる見知らぬ男(シンイチ)が入ってきて、そこからお話が始まっていく感じや、徐々にシンイチとは何者かが分かりつつも、だんだん哲郎のほうも何者かが分かってくるなど、その辺は結構計算されて作られたのでしょうか。




広瀬:そうですね。かなり脚本作りには苦労しました。例えば、シンイチが哲郎に湯たんぽを入れてもらっていたのが、後半で逆にシンイチが哲郎に入れてあげるようになるとか、哲郎に肩を担がれていたのが、それも後半では逆になるとか、そういった細部の反転。また、どこで他者であるシンイチになろうとして、どこで自分に戻ろうとしたかという流れや、哲郎がどこでシンイチのうそに気付いたのかなどの、いわゆる転換点。そういった部分を計算して考えつつも、それはあえて見せないようにしました。


 見せないことによって想像してもらい、より作品が豊かになっていくような、そういう作り方をしています。


Q:この映画は、夜明けに始まり夜明けに終わるので、タイトルが『夜明け』になってると思うのですが、どうしてそのような構成にしようと思ったのでしょうか。


広瀬:まず大きなイメージとして、夜の中をずっとさまよい歩いているような、暗闇を手探りで歩いてるようなイメージがありまして、その夜がいつか明けてほしいという気持ちを込めて、『夜明け』というタイトルを付けました。そしてそのタイトルからビジュアルが思いついた感じですね。でも、作品自体が未明というか、明けきっていない作品だと思います。


Q:その未明というのは、どういう意味でしょう。


広瀬:何かこう明確な答えが見つかったわけではないと思いますし、シンイチはきっと今後も悩むだろうし、葛藤するだろうとは思います。でも、誰かに従うのではなく、初めて自分の力で考えようとする。この立ち止まって考えるっていうこと自体は、とても大きな成長だと思います。一方で、何か明確な答えを見つけるっていうこと以上に、答えが見つけられないことも一つの答えだと思います。


Q:なるほど。


広瀬:立ち止まったり葛藤したりということ自体を肯定してあげられるような、そんな映画にしたいなと思っていました。



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