転機を自覚する
Q:今回の作品はとても大人の映画だなと感じました。私自身、主人公達3人と近い年代なのですが、我々の年代の「大人」の映画って今まであまりなかった印象があります。この世代はちょうど若手とベテランの間でもあり中途半端な気もしていたのですが、監督から見て今の39歳前後の世代をどういう風に捉えてますか。
阪本:そうですね。自分がこの世代のときは、彼らと何か違ってたとは思うんですね。生きていた時代も20年違いますし。なるほど、大人だなと思ってもらえたんだね。同級生という関係性の場面があるからかな。主人公の3人は結構子どもじみたところもあるじゃないですか。過去にああいう感じで、校庭の隅っこで遊んでたのかなとか思いつつ。自分としては、過去の郷愁には戻れないところから、それを取り戻す話にしようかなと。
Q:映画では、大人としての対応が迫られる場面が都度出てきます。先ほどお話された、今まで刻んできた人生を背負って生きてるっていう意味でも「あっ、もう大人になってるんだな」と、映画を見て感じたんですよね。監督の意図としては、ちょっとまだ子どもじみてるという感じだったのですかね。
阪本:「おまえら、もうちょっとちゃんとしようよ」って感じだよね。
Q:なるほど。
阪本:それを、「ちゃんとしようよ」っていうのが、「ちゃんとしなきゃ」につながってくれたから「大人」という印象を持ってくれたのかもしれないね。この映画の中で、彼らは転機を迎えるわけですよね。そのときに「今、俺は転機の中にいる」って自覚できる人間にしてるっていうのがありますよね。感情に流されずね。ある種のステップアップした冷静さを持てるようになっていくっていう話ではあるんです。
Q:「まだ続いていくんだ」というセリフもあります。あの辺もとても印象的だなと思いました。その続いていくっていうことと、『半世界』っていうタイトルとが、ちょっとシンクロした感じがしました。
阪本:俺は小石清さんという方の写真集のタイトル『半世界』からインスパイアされたんですけど。みなさん色々な受け止め方をしてくれてもいますよね。夫婦で、半世界と半世界を持ち寄ってるって言う方もいますよ。
Q:それも面白いですね。
阪本:見る方がこのタイトルをどう受け止めて、見終わった後、自分の生活の中で「これも半世界か」って思うことがあれば嬉しいですね。