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60歳になったら監督を辞めるつもりだった『半世界』阪本順治監督【Director’s Interview Vol.19】

60歳になったら監督を辞めるつもりだった『半世界』阪本順治監督【Director’s Interview Vol.19】


撮影監督:儀間眞悟



Q:前作の『エルネスト』に次いで、今回も撮影監督が儀間眞悟さんです。儀間さんは監督がいつもタッグを組んでる笠松則通さんのお弟子さんだそうですが、前回と今回、儀間さんと一緒にやってみてどうでしたか。


阪本:儀間くんは、笠松さんの最後の弟子なんですよ。俺は彼が助手のころから彼をずっと知ってるわけね。笠松イズムを本当に十数年かけて継承してきた子なんで、一緒にやったのはそこの信頼度ですね。だってそれまで、儀間が撮った映像なんて1回も見たことないんだもん。それでも仕事したんです。


Q:そうなんですか。


阪本:それをいきなり『エルネスト』でキューバ連れていくんだから、ものすごい冒険だったわけです。儀間が撮った映像を見たことがない、つまり彼のセンスを知らないわけです。でも笠松イズムだけで信用した。あと、助手時代の仕事っぷりね。助手時代、最初の頃はダメでしたよ(笑)。現場でピントを合わせきれず「役者に謝りなさい」って言ってたぐらいだからね(笑)。でもそうやって、ずっと離れず一緒にやってきた人間なんで、全く知らない他の映画見て「ああ、このカメラマンいいな。一回やってみようかな」っていうよりも、撮った映像見たことないけど、儀間を信じたんだよね。




 彼は彼で、俺を見てきたわけですよね。だから俺のこと分かってるんだ。そういう関係性でなければ冒険できなかったし、「はじめまして」のカメラマンでは、キューバは成り立たないと思った。で、実際にやってもらって、俺は満足してますよ。もちろん現場でのディスカッションは結構あったんです。初めてってことで儀間も相当意気込んでるからね。


Q:それは気合入りますよね。


阪本:「いやいや、儀間、そうじゃないんだよ」って現場でいろいろ言ってました。いまだに言ってます。偉そうに言うと、もうちょっと彼に覚えてほしいことがあるわけです。「人間撮るんだよ」ってことはもうずっと言いつづけてるんだけど、やっぱりまだ2本目になっても、画作りに対して意気込みが邪魔するときがあるわけです。


 カメラマンはみんな同世代の監督か自分より若い監督とやることになる。そうすると、やっぱり現場を引っ張るのはカメラマンの役目なんですよ。カメラマンの意思とか意見が、現場の作り方や出来上がるものに対して強く濃厚に出るんです。だから「そういう自分より若い監督とやる前に、俺みたいなおっさんにギャーギャー言われとけ」って言ってるんです(笑)。「どうせ若い監督と一緒にやるときは、偉そうに言うんだろ」って。そんな感じですよ(笑)。だからまた、もう1本ぐらいは一緒にやって、あとは突き放そうかなと思ってます。育てると言うより、俺を否定して、飛んでいけって感じですか。そんなこと言わなくても、彼のよさを頼ってオファーが来ますよ。それまでの腰掛けに俺を利用すればいい。


Q:今までの阪本さん・笠松さんのトーンとちょっと違うのかなって、映画を見て思ってました。


阪本:大体弟子筋は、師匠と違う感覚でやりたいと思う。だからイズムっていうのは、撮影技師としての気構えであったり、助手の叱り方であったり、そういうことなんです。例えば、笠松さんは標準レンズの28ミリが好きなんですよ。で、儀間は違うミリ数が自分の基準なんです。だから継承するのは、その撮影監督としての物の考え方とか、自尊心の持ち方とか、監督とのコミュニケーションの取り方とか、ギャラのもらい方とか(笑)だよね。でも撮りたい画は師匠と違う。


Q:一本になる(独立する)って、そういうことになるんですね。自分でやっていくっていう。


阪本:そうでしょうね。師匠の画作りをずっとそばで見てるから、逆に言うと、自分らしさを発想できるんですよ。


Q:「俺だったらこうするのにな」って横でじっと見てるんですかね。


阪本:助手のときはそこまで余裕はないかな。ただ、自分の師匠が撮ったものを出来上がって観たときに、感じるものはあるかもしれない。「あっ、こういうとこ学ぼう」とか「師匠とは違うアプローチをしたいとか」。要するに同じことしたくないじゃないですか。監督だって、助監督時代に付いた師匠と全く同じ撮り方で、全く同じ演出してたら、ねえ。


Q:そうですね。


阪本:うん、成り上がった意味がないからね。



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