西加奈子の人気小説「まく子」。今回この原作の映画化に挑んだのは、PFF出身の鶴岡慧子監督。本格的な商業映画はほぼ初だという鶴岡監督が、どのようにしてこの大きなプロジェクトに向き合ったのか。企画段階から撮影時のエピソードまで、監督本人に話を伺った。
Index
原作からの変換
Q:これまでに劇場公開作を何本か撮ってらっしゃいますけど、今回は作品規模が結構大きいですよね。
鶴岡:そうですね。今まで劇場公開作品は2本ぐらいあるんですけど、実は本格的な商業映画は今回が初です。
Q:それまではオリジナル脚本だと思いますが、今回は原作モノです。
鶴岡:学生の時、課題で原作モノはやったのですが、今回ほぼ初めてですね。
Q:授業でも原作モノってやるんですね。
鶴岡:はい。先生の黒沢清さんが、既に著作権が切れてるような古い小説から課題を出されるんです。その時の原作は、ツルゲーネフの『初恋』でした。それで1本映画を撮りました。
Q:その時も原作を脚本に落とし込まれたんですか。
鶴岡:そうですね。とにかく提出しなきゃいけないので、一応やりましたが、初めてで全然分からない状態でした。
Q:今回は人気のある現代小説が原作で、監督が脚本も手掛けられてますが、原作から脚本に落とし込む際に、気をつけたことはありますか。
(左)文庫版『まく子』(福音館文庫刊)(702円) (右)撮影:若木信吾
鶴岡:最初は、原作そのままの感じで脚本にしたので、ものすごい長さになってしまったんです。そこをプロデューサーに指導してもらって、一緒に作業しながらどんどん削っていきました。また、キャストの関係から撮影時期が春休みになったので、原作の夏の設定を春に置き換えたりしています。
Q:結構なビッグプロジェクトだと思いますが、最初にお声掛けがあった時はどんな感じでしたか?
鶴岡:もうこんなにいい話はないなと興奮しつつも、変に舞い上がってボロが出ないようにしてました(笑)。原作も入り込みやすく、非常に掘り下げたくなるような内容だったので、いつもどおりのやり方で脚本は書けたと思います。