マンチェスターの男は「自分こそが最高で他の連中はクソ」という思想を持っている(笑)『イングランド・イズ・マイン モリッシー、はじまりの物語』マーク・ギル監督【Director’s Interview Vol.29】
ザ・スミスのフロントマンとして世に出て以来、世界中のロックファンから熱狂的な支持を受けている英国マンチェスター出身のアーティスト、モリッシー。今年60歳になった彼は新譜『カリフォルニア・サン』をリリースし、現在も精力的に活動を続けている。そんなカリスマの若き日に発想を得た『イングランド・イズ・マイン モリッシー、はじまりの物語』が、いよいよ日本公開される。それに合わせて同じマンチェスター出身のマーク・ギル監督が来日。モリッシーをヒントにしているが伝記映画ではなく、あくまで青春映画である、という彼に、映画創作の秘密を訊いた。
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ウィキペディアの映画化だけはしたくなかった
Q:モリッシーの若き日を題材に映画を撮るというのは大胆なアイデアですが、そもそもの発想はどこから得たのですか?
ギル:やはり思春期にザ・スミスが大好きだったことだね。モリッシーが住んでいた家は僕の家の近くだったから思い入れも強かったし、それが映画作りの原動力となった。ただ、「コレの次はコレが起きて、次にコレがあって…」というような、ウィキペディアのページをそのまま描いたような映画にはしたくなかった。『ボヘミアン・ラプソディ』(18)はクイーンの曲を使ってそれをやっているけれど、フレディ・マーキュリーの精神については何も教えてくれなかったじゃないか(笑)。
とにかく、そういうアプローチは避けたかった。そこで無名時代のモリッシーの6,7年間にフォーカスしたんだ。それはモリッシーという人間を形成した時期で、彼の人となりがよくわかり、なおかつ周囲の人々が彼にどのような影響をあたえたかというドラマもある。面白い題材だと思ったよ。それに僕ならこの物語を映画にできるという自信もあった。というのも、僕自身、似たような青春時代をおくってきたし、自分の生き方を探す旅には共感できたからね。
Q:近所に住んでいたということは、モリッシーと接点はあったのですか?
ギル:直接的な接触はなかった。皆と同じように、初めてモリッシーと遭遇したのはTVに出ている彼だったよ。ただ、僕の家の裏に彼の従妹が住んでいて、彼女はザ・スミスのTシャツを着ていたんだ。そのときはわからなかったけど、しばらくしてTVで見たあのバンドのTシャツであると知ったんだ。
モリッシーとは12歳離れているから世代は違うけれど、彼の母校とはサッカーの試合で対戦したことがある。モリッシーの母校が暴力的で悪名高いことは皆、知ってるよね。ザ・スミスの曲“ヘッドマスターズ・リチュアル”で歌われている、あの学校だ。ちなみにサッカーの試合では、僕らは負けた(苦笑)。