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木彫りの表情が語りかけるーー人形に込めた想いとは。『ごん GON, THE LITTLE FOX』メイキングvol.2

木彫りの表情が語りかけるーー人形に込めた想いとは。『ごん GON, THE LITTLE FOX』メイキングvol.2

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アニメの要となる球体関節…まず動きがあって、骨がある



 ストップモーションアニメの人形には、中に金属製の関節(アーマチュア)が仕込まれている。


 柔らかく曲がるアルミ線や鉛線などを仕込むことも多いが、これらは何度も曲げ伸ばしすると金属疲労による断線を起こしてしまう。長期間の撮影であったり、同じ動きを繰り返す人形にはアーマチュアを仕込むのがポピュラーな方法だ。これがどれほどフレキシブルに動くかが演技の要となる。




 アーマチュアはデザイン画を元に設計される。この時設計する人間が頭に入れなければいけないのは、そのキャラクターが「どう動くか」である。


 絵コンテを見て、彼は立っているだけなのか、座るのか、手を上に振り上げる動きがあるか。などなど細かく精査していく。この設計が不十分だと、思ったとおりに動かない人形ができてしまう。


 いざアニメートの段階で、演出家が「今思いついたんだけど、そこでちょっとしゃがんでみて?」などと言っても後の祭り。金属の関節には人間ほどの柔軟さはない。「しゃがむ」という動作に必要な、膝や足首を深く曲げる構造を設計段階で作る必要があるのだ。


 兵十のアーマチュアは、日本人らしい〝床にあぐらで座る生活〟をするため特別に作られた。


 通常通りにまっすぐ作られた人形の骨では、90度以上ヒザを曲げると骨と関節がぶつかってしまい、深く曲げることができない。そのため腿の骨にはカーブがつけられている。


 また、立った状態からあぐらに移行するときのため、足首や足先も深く曲げられるようにしている。こういった細やかな設計は、普段から人間の動きを注意深く観察していないと、思いつくことすら難しい。 




 『ごん』には、兵十が住む村の村人たちも多く登場する。人物の総数は27人。彼らにもすべてアーマチュアが仕込まれた。





 汎用部品は既製のパーツを購入し、それらを加工して組み上げているが、入手できない特殊なパーツはゼロから作っている。ひとつひとつ真鍮の板を加工して、小さな金属球に穴を空ける。専門的な技術のいる高度な作業だ。


 『ごん』では日本でも数少ない、高精度のアーマチュアを作ることができるスタッフをチームに迎え、関節人形の大量生産に挑んだ。


 「関節は、もしどこか手を抜くと、アニメートのとき必ずそこに不具合が出る。衣装に覆われて見えなくなってしまう部分だけれど、綺麗に作りたい。」


 アーマチュアを担当したスタッフの言葉だ。この心配りが『ごん』のクオリティを見えないところから支えている。



-Next-

芸術品として魅せる。こだわりの美術セットーー国産ストップモーション・アニメ『ごん GON, THE LITTLE FOX』メイキングvol.3

時代考証を重ね、細部まで緻密に作られた古民家と小道具の数々。それらに共通するこだわりは「ミニチュアとしてではなく、一個の芸術品として作ること」。メイキング写真とともに紹介する。



vol.1はこちらから

「現代だからこそ、あえてコマ撮り。“実在感”あるビジュアルをいかに創造するか。



取材・文: 池浦 蓮介

1988年生まれ、東京都出身。

高校生の時に観た『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』をきっかけに、ストップモーションアニメの世界にのめり込む。

大学卒業後、映像制作業のフリーランスとして活動中。



『ごん GON, THE LITTLE FOX』 

(新美南吉「ごんぎつね」原作)

2019年秋公開予定 上映時間:28分

制作・著作:太陽企画/エクスプローラーズ ジャパン

公式サイト: http://gon-project.com/ 

公式twitter: https://twitter.com/gon_tecarat

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