ものづくりは本当に好きだけど、こんなに苦しいことはないと思って作っています。『Midnight / 0時』Jo Motoyo監督【Director’s Interview Vol.34】
計算された色彩感覚
Q:映画の中では、119番のオペレーションルームが多くのシーンで出てきますが、限定空間ゆえに撮り方が難しかったかと思います。コンテは細かく描かれたのでしょうか。
Jo:コンテはめちゃくちゃ細かく描いたんですけど、一切それ通りにはなりませんでした。でも私いつもそうなんです。イメージ共有としてコンテを描きますけど、やっぱり現場を見たら、もっともっと違うアングルで撮りたくなるんです。それはもう、その場でフレキシブルに進めていきますね。だからDP(Director of photography / 撮影監督)の方にも、いつもそのやり方をお伝えしています。コンテに忠実にやらなくて大丈夫です。生きてるものを撮りましょうって言っています。
Q:色彩豊かなビジュアルもとても印象的です。DPとはどんな風に話されたのでしょうか。
Jo:この作品、海外の方からは「ギャスパー・ノエっぽい!」ってよく言われました。でも私は全然意識してなかったんですけどね。
Q:確かに『エンター・ザ・ボイド』(09)みたいな色彩感覚はありますね。
Jo:まさにそういう風に言われました。もちろん『エンター・ザ・ボイド』は好きですけど、自分的にはそこに引っ張られたとか、それを目指した感覚は全くなかったんです。題材が暗くて重いものを扱っているからこそ、絵作りは生き生きして、生々しい人間にしたいって、DPに伝えました。この作品の内容だと、冷たく張り詰めた感じの青っぽい方向に転がすのが普通なのかもしれません。でもなんか、それってちょっと当たり前すぎるなと思ったんです。肌もほんのり色づかせて、唇の色も実際よりもトーンをものすごく持ち上げて、生々しい生命感を描こうとしました。DPとカラリストは、その意図をすごく汲んでくれて、綺麗に仕上げてくれましたね。
Q:現場での照明は大変だったのではないでしょうか。
Jo:照明はかなり仕込みまくってました。ブラックライトを当てると、海の世界が浮かび上がるカラオケ館でどうしても撮影したくて、方々から探してもらって、頑張って交渉して使わせてもらいました。そもそもカラオケボックスのシーンは、オペレータルームとの対比で、カラフルな世界観にしたかったんです。なので、もうバチバチに照明を当てて、ミラーボールまで回してました(笑)。