リアリズムより印象を大事に
全体に共通しているのは、模型のように本物そっくりに作るのではなく、その生き物から受けた印象を大事にしている点だ。
例えばカエルの人形は、監督が自宅の庭で本物のカエルを見かけたときに受けた「ピュッと足を伸ばして跳んだカエルの腿の付け根が細くて、まるで点で繋がっているように見えた」という印象を強調してデザインされた。
印象を重視しているという点では、このカエルが出演する雨のシーンが面白い。
樹脂製の水しぶきを何種類も用意し、1コマごとに置きかえて撮影して、地面にあたって跳ね返った雨粒の動きを表現している。もちろん実際の雨は、肉眼でここまで詳細な動きをとらえることはできない。
大粒の雨が降ってきた時に感じる印象を再現しようと、雨の動きを丁寧に追っていった結果、スローモーションがかかったように見えている。こういった誇張表現と時間操作は、アニメーションの醍醐味といえるだろう。
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制約を強みに変える。命吹き込むアニメートの技術『ごん GON, THE LITTLE FOX』メイキングvol.5
人形はひとりで動いてはくれない。動かすために様々な仕掛けを作り、緻密な計算を重ねる。アニメートする上でかかる様々な制約を強みに変える方法について、監督に話を聞いた。
取材・文:池浦 蓮介
1988年生まれ、東京都出身。
高校生の時に観た『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』をきっかけに、ストップモーションアニメの世界にのめり込む。
大学卒業後、映像制作業のフリーランスとして活動中。
『ごん GON, THE LITTLE FOX』
(新美南吉「ごんぎつね」原作)
2019年秋公開予定 上映時間:28分
制作・著作:太陽企画/エクスプローラーズ ジャパン
公式サイト: http://gon-project.com/
公式twitter: https://twitter.com/gon_tecarat