大仕掛け!歩きのアニメーション
アニメートは直感的に進める時もあるが、事前に綿密な設計をして進めるときもある。
特に複数のキャラクターが出演する場合や、同じ動きを正確に繰り返す場合は、設計をしっかりしておかないと途中で破綻してしまったり、時間がかかりすぎて効率が悪い。
今回最も出演する人数が多かった葬列のシーンは、かなり大掛かりな仕掛けで撮影された。
アニメートを設計をする際は、まず動きを分解して考える。「歩き」なら、①頭の位置が一定のリズムで上下動する。②右手が前に出て、左手が下がる。③手と同時に左足が前に出て、右足が下がる。(二歩目からは手足の左右を入れ替えて繰り返す)という三種類の動きに分解できる。
そこで活躍するのが八代監督が考案した「アルッカム」だ。偏心した円盤を回転させ、上下動させるカム構造で、棒の先に取り付けた人形を一定の間隔で上下させる。操作は簡単で、一コマ撮るごとに円盤を1目盛ずつ回転させていけばいい。これで①の動きを正確に繰り返すことができる。(ちなみにアルッカムは、歩くとカムをかけた造語である。)
このアルッカムを付けた人形を台車の上に一列にならべて、床に敷いたレールの上をスライドできるようにした。1コマごとに台車を数ミリずつ動かし、列を一斉に前進させる。
一見大掛かりな仕掛けは手間がかかるように思えるが、動きを分解し、システマチックにすることで間違いを減らして管理しやすくする。それがアニメーターの負担を減らし、効率的に撮影することに繋がるのだ。
とはいえ、人形の歩き方が全て同じになってしまっては、生きたアニメーションにはならない。大人と子供、男性と女性で、歩幅も歩き方も違う。また、棺桶を担ぎながら歩く者、鐘を鳴らすもの、四本旗を持つ者と、小道具も多い。本番に入る前に全ての人形をテスト撮影し、細部まで動きを決めてからアニメーター3人がかりで手分けしてアニメートした。