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夏の終わりと『ムーンライズ・キングダム』【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.29】

夏の終わりと『ムーンライズ・キングダム』【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.29】

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黄味がかった思い出の色彩



 それは9月の始めのこととして描かれるけれど、8月末と9月の頭にそれほど違いはないだろうから、ひと夏の冒険と呼んでも差し支えはないだろう。ひと夏の冒険、ひと夏の思い出に通じる色彩を、この映画は持っていると思う。


 『ムーンライズ・キングダム』は1960年代の小さな島を舞台に、少年少女の恋の逃避行と、ふたりを取り巻く人々の変化を描いた物語。ボーイスカウトのはぐれ者サムが密かに文通していた少女スージーと家出をしたから、さあ大変。ボーイスカウトの少年たちは"脱走兵"を連れ戻すため捜索を始め、スージーの両親や島で唯一の警官をはじめ大人たちもその行方を追うが、同じ頃、島には嵐も近づいていた……。


 とにかく大好きなお話で、少年少女の小さな冒険はもちろん、カーキの制服と黄色いスカーフで決めたボーイスカウト、巨大なドールハウスのように内部が映し出される家、丁寧にやりとりされる手紙、電話、島に一台しかないパトカーといったひとつひとつの要素をあげれば切りがなく、好きな理由を考えるのは難しいけれど、もし一言で言い表すなら、その黄色っぽい色が好きだ。サムと彼が属すボーイスカウトの色が周囲に伝染したかのように、スージーのピンクのワンピースや、ブルース・ウィリス扮する冴えない警官のモノトーンの制服、青空さえも黄色っぽく見えてくるようだ(一番黄色いのはサムの里親の部屋だが)。全体を包むそんな黄味がかった空気が、物語を誰かの思い出であるかのように感じさせる。



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