カメジローの言葉や生き様を通して「今」が見えてくると思います。『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯』佐古忠彦監督【Director’s Interview Vol.37】
小異を捨てずに大同につく
Q:亀次郎さんは若いころ社会運動に傾倒していた時期もあったそうですが、戦後の活動にはいわゆる「左翼」、「リベラル」といった言葉だけでは言い表せないものがあるように感じました。
佐古:つい最近の翁長沖縄県知事を取り巻いていた風景を見たときに、過去の沖縄にあった風景と似ているのではないかと思ったんです。かつての瀬長亀次郎を取り巻く風景だったんですね。思いを託すように、その演説の場に駆けつける県民、民衆たちの風景。戦後すぐの沖縄でも、同じような光景があったんだよ、と、多くの方がおっしゃいました。
では全く政治的には立場が違う2人の政治家をとりまく風景が、なぜ重なって見えるのか。それこそが沖縄の歴史が表すものではないか。つまり本土側の政治的、あるいは思想的な価値観で沖縄を見ると間違ってしまうのではないかと思うんです。その視点に立つと、今ある風景の理由が見えてくる。
亀次郎さんの言葉で「小異を捨てずに大同につく」という言葉があります。今の時代、「右」とか「左」とか、「保守」とか「革新」とかと、すぐにカテゴライズしてしまいがちなんだけど、そういうものを全て超越したところにいたからこそ、市民とあれだけ近い距離感があり、支持されたんだと思うんです。
Q:私も「小異を捨てずに大同につく」という言葉がとても印象に残っています。多様性を認めつつ、全体としていい方向に持っていこうという考え方。そういう意味では現代に通じるテーマ性を持つ人物だと思いました。
佐古:亀次郎さん自身があの時代にあって男女平等という意識をすごく持っていて、それを一番唱えていた人でもあったし、まさに多様性ということを一番に考えていた人だと思います。時代を先取りしていたかのようにみえます。