カメジローの言葉や生き様を通して「今」が見えてくると思います。『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯』佐古忠彦監督【Director’s Interview Vol.37】
民主主義の重み
Q:1967年の「教公二法の廃案」も印象的なシーンでした。あの経緯を見ていると、今の香港のデモに重なるものがあります。日本では大衆は動かないという論調もありますが、沖縄では大衆が動いて実際に住民が良いと思わない法律を廃案に追い込んだ実績がある。
佐古:「沖縄は民主主義を一つ一つ勝ち取っていった」という風に言われますが、まさにそうだと思います。本土の側が与えられた民主主義であり、沖縄は一つ一つ勝ちとってきた民主主義。民主主義の重みが違う。映画でも描きましたが、1964年に断水が起きて、でも給水権がアメリカにあるため那覇市にはなすすべがない。
このとき亀次郎さんが日記に書いているのは、「基地撤去の運動というのは単なる平和運動ではない。この水の問題で主権を奪われているということの惨めさがわかるだろう」と。「主権を奪われる」とはどういうことなのかと。つまりイデオロギーではなくて生活に密着した問題だということなんですね。だからこそ一つ一つ権利を勝ち取っていって日本に戻るんだ、主権を奪い返すんだ、ということになっていく。
まだまだ沖縄をめぐっては民意が反映されない現実がある。沖縄は今もって民主主義を勝ち取って行こうという途上にあるように見えるんです。
Q:現在の辺野古の基地反対の動きも、今の状況だけ切り取ってみると、意味が分からない人には全然わからない。実際私もよくわかっていませんでした。でも亀次郎さんを通して戦後史を見ていくと全部つながっているんですよね。突然出てきた状況ではないということが、よくわかります。
佐古:ああいった動きを見て「プロ市民が・・・」といった言葉を使って批判する人もいます。なぜそういうワードになってしまうのかなと。だから本当に歴史の流れを伝えたいなという思いもありました。
Q:個人的には日本の学校は、歴史の授業で近現代史を教えなさすぎだと感じます。そこを知らないと今の自分たちに切実な問題なのに「問題」として認識できません。
佐古:歴史の授業を近現代から始めて欲しいという声もあるくらい。それも一つの方法かと思います。せめてテーマごとに。例えばトランプ大統領が「不公平だ」と言った日米安保条約とか。
じゃあなぜ安保条約ができたのかといえば、第二次大戦直後に占領されていた日本が主権を回復することが決まった日に、安保条約も結ばれているわけです。ではそこから安保がどうやって今まで継続してきたのかを知ることは、本当にこれからを考えることにつながるし、意義があると思うんですけどね。