悲劇に繋がる、兵十の失敗
Q:『ごん』では、兵十の過去や人物像を掘り下げてあったりと、原作にはない要素をプラスされていますよね。これはどのような意図があったのですか。
八代:原作はとても短い文章なので、兵十に詳しく触れないことが可能です。ごんを「イタズラ狐だから駆除する」って理由で撃っても、そんなに悪者にならない。
ごんぎつねはたくさん絵本になっています。これは僕の見解なんですがーー僕が一番好きな黒井健さんの絵本は、兵十の顔を描かないことで、ちょうどよく原作の意図通りに読むことができるんです。逆に兵十の顔がはっきり描かれてる本は、必ずそこに何らかのキャラクターが付加される。そのまま読むと、兵十が悪者のように感じてしまうと気が付きました。
それで、アニメでビジュアルを作る以上はもうちょっと「ごんを撃ってもしょうがない理由」を作らないとダメだなと。ごんを撃ったのは兵十が悪者だからじゃなく、彼なりの事情があるということにしたんです。
Q:兵十なりの事情というのは・・・
八代:「ごん」の兵十は、元来穏やかで優しい性格です。悪く言えば気が弱い。獣を撃つことをあまり好みません。そんな彼が、なぜごんを撃ってしまうのか。
セカイノオワリの「RPG」と言う曲に『「世間」という悪魔に惑わされないで。自分だけが決めた「答」を思い出して。』と言う歌詞があります。「世間」という悪魔に惑わされたこと。「ごん」における兵十の失敗は、これなんです。
Q:詳しくは本編で、ということですね。兵十側の事情が加えられたことで、あのラストシーンも変わって見えるかもしれませんね。
次回も引き続き、監督インタビューをお送りします。
声で活きるキャラクターの個性『ごん GON, THE LITTLE FOX』メイキングvol.8
最終回は、ごんと兵十の声優を選んだ経緯、収録の様子など現場のこぼれ話を聞きつつ、さらにキャラクターについて掘り下げていく。
取材・文:池浦 蓮介
1988年生まれ、東京都出身。
高校生の時に観た『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』をきっかけに、ストップモーションアニメの世界にのめり込む。
大学卒業後、映像制作業のフリーランスとして活動中。
『ごん GON, THE LITTLE FOX』
(新美南吉「ごんぎつね」原作)
2019年秋公開予定 上映時間:28分
制作・著作:太陽企画/エクスプローラーズ ジャパン
公式サイト: http://gon-project.com/
公式twitter: https://twitter.com/gon_tecarat