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『戦火の馬』馬と青年との友情物語に、巨匠スピルバーグが魅了された理由

(c)Photofest / Getty Images

『戦火の馬』馬と青年との友情物語に、巨匠スピルバーグが魅了された理由

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スピルバーグ作品に通底する、異種間のコンタクト



 映画の舞台は、第一次世界大戦前夜のイギリス。同国の南西部に位置するデヴォン州の美しい牧場で、鹿毛色の仔馬が生まれた。その仔馬は、額にダイヤ形の白斑を持ち、脚先には白い靴下をはいたような模様が刻まれている。小作農家の息子である青年アルバートは、仔馬の誕生を目撃し、その仔馬に運命的な魅力を感じ、ひどく魅了された様子だ。そうして、成長した仔馬は、母馬と引き離された挙句、村の競売にかけられてしまう。その仔馬を競り落としたのは、なんと青年アルバートの父親テッド・ナラコット(ピーター・マラン)だった。


 映画序盤では、美しい緑の広がるノスタルジックな農村を背景に、青年アルバートとその家族の物語を掘りさげてゆく。テッドが競り落とした仔馬は、農耕には不向きなサラブレッド。しかし畑を耕さなければ、小作料を納めることができず、農場からの立ち退きを余儀なくされる。青年アルバートは、鹿毛色の仔馬をジョーイと名付け、開戦の機運が高まる中、ジョーイとアルバートは、次第に唯一無二の絆で結ばれてゆく。彼らが心を通じ合わせるプロセスこそ、この物語を抒情深くしている最大の要素にほかならない。



『戦火の馬』(c)Photofest / Getty Images


 本作『戦火の馬』では、人間と馬との異種間の交流が一貫して描かれているが、ほかでもないスピルバーグ監督といえば、人間と非人間とのファンタジックな物語を綴る、天才的な映画作家であるといえる。


 『未知との遭遇』(77)や『E.T.』(82)では、人類と未知の生命体との友好的な接触を描いていたし、『ジュラシック・パーク』(93)では、蘇りし恐竜たちが主演として輝いていた。つまりモーパーゴによる「戦火の馬」は、スピルバーグ作品と同様の性質を持った文学であり、スピルバーグが「戦火の馬」の物語に魅了されたのも、極めて自然な反応だったといえる。



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