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ポップでキッチュ、しかし必要なものが揃っている実写版の原点
『THE BATMAN-ザ・バットマン-』に登場した最新の実写版となる怪人ペンギンを見て、また自分の中でペンギン愛が強まっている。ここで代表的な実写映像化作品で、3人の俳優が演じたペンギンのイメージをまとめておきたい。同じキャラクターに基づきながら、並べてみるとそれぞれの造形と特徴、趣の違いが際立つと思う。
漫画の忠実な実写化という色合いの強い1960年代のTVシリーズ『怪鳥人間バットマン』は、カラフルな色彩とゆるめのノリ、タイツ丸出しのバットマンと短パンのロビン、乱闘時に画面に登場する漫画的効果音などから、笑いの的になりがちである。もちろん笑いながら楽しむのは間違っちゃいないが、本シリーズはバットマンシリーズの初期実写化作品として決して馬鹿にはできない(厳密にはこれより前にモノクロの映像化作品があるが古すぎるので割愛する)。なにごとも最初があるから始まるのである。小学生で本シリーズの映画版『バットマン オリジナル・ムービー』を観たときには、黒い球体から導火線が伸びた「ザ・爆弾」を頭上に持って走り惑うバットマンを見て、「なんだこりゃ……」と思ったものだが、今ではあの色彩の洒脱さやかわいさが結構好きだったりする。
この『怪鳥人間』で怪人ペンギンを演じたのはバージェス・メレディス。シルヴェスター・スタローンの『ロッキー』でのロッキーのトレーナーであるミッキー・ゴールドミル役などでも知られるが、『怪鳥人間』でのペンギン役はジョーカーやリドラーと並ぶ手強いメインヴィランであり、強烈な印象を残している。前述の映画版ではペンギン型の潜水艦というなんともかわいいメカを動員して、バットマンに対する悪党の同盟で中心的役割を演じる。これに伴ってバットマンの映画で初めてペンギンを演じたのもメレディスとなる。
メレディスのペンギンは、この後スクリーンに登場するペンギンたちに比べるとほとんど普通のおじさんなのだが、くちばしにたとえられる鼻だけはやや尖った形にメイクされている。このバージョンはとにかく自然な服装でペンギンらしいシルエットを再現しているところがよくて、キャラクターのスタンダードを提示していると言える。黒い燕尾服に、丸く突き出した白ベストのバランスがペンギンそのもの。紫色のシルクハットも洒落ているが、なによりメレディス版の特徴は、彼自身による「クワーックワックワッ」というペンギンの鳴き声を模した笑い声だと思っている。片目にモノクルをはめて長いシガレットホルダーをつけた煙草をくわえ、この笑い声を上げながら悪知恵を働かせるその姿は、原作コミックからそのまま飛び出してきたかのようだった。