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『恋におちて』観客を危険な恋とニューヨークへと誘う、ロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープ魅惑の競演作

(c)Photofest / Getty Images

『恋におちて』観客を危険な恋とニューヨークへと誘う、ロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープ魅惑の競演作

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寄せては返す感情を掬い取った脚本の妙



 フランクには冷静で信じられる妻と育ち盛りの男の子が2人いる。職場では、破綻した結婚を修正しないまま引きずる同僚のエド(ハーヴェイ・カイテル)が、モリーと出会ってからのフランクに微妙な影響を与え始める。一方モリーは、医師の夫との結婚生活はうまくいっておらず、友人のキャリアーウーマン、イザベル(ダイアン・ウィースト)も、夫婦関係は破綻し若い男たちとの奔放な関係を楽しんでいる。


 この否が応でも危険を予感させるキャラクターの配置が絶妙だ。そして、最初は偶然の出会いと再会によって徐々にヒートアップしていくフランクとモリーの関係が、勢いで一気に燃え上がるかと思えば、一転、良識に目覚めて平熱に戻り、その後、その反動でさらに熱を帯びていく。この緩急のつけ方も、観客を思わず前のめりにさせる脚本の妙と言えよう。



『恋におちて』TM & COPYRIGHT (C) 1984 BY PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.


 恋愛心理に関する著書が多いアメリカの心理学者ドロシー・テノフは、『恋におちて』について、「恋する男女が中毒症状に陥った状況を繊細に描いている」と評価。また、脚本を担当したクリストファーは、「人は誰でも恋に落ちることは素晴らしいと考えているけれど、同時に、それは時として破壊的な行為であることを知らなければならない」とコメントしている。


 その言葉通り、恋におちた男女がロマンチックな感情に取り憑かれ、流され、やがて双方の人生を破滅へ追いやろうとするプロセスを、安易な省略や観念的な描写を一切用いることなく、最後まで正確に描いているところが本作の魅力だ。



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