(c) PATHÉ PRODUCTIONS LIMITED AND BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2019
『ジュディ 虹の彼方に』ジュディ・ガーランドとレネー・ゼルウィガー。響き合う2つの魂
2020.03.06
2つの時代を行き来しながら描く1人の女優の人生
『ジュディ 虹の彼方に』(19)は2つの時代を行き来しながら、スターの人生の真実に分け入ろうとする。1つは、ガーランドの子役としての全盛期。もう1つは、『スタア誕生』でも再ブレイクできず、映画からステージへと活躍の場を移したものの、薬物依存の悪化から困窮を極め、流れ着いたロンドンで何とか観客の期待に応えようとする、46歳当時の彼女だ。どちらの時代も、総じて直視するのは辛い。
1961年にニューヨークのカーネギーホールで行ったコンサートは、”生涯最高のパフォーマンス”と絶賛されるが、その後に出演したTV番組「ジュディ・ガーランド・ショウ」は低視聴率を理由に打ち切りに。コンサートで各地を巡業するようになってからは、宿泊費の延滞でホテルを追い出されることもしばしばだった。つまり、彼女は無一文のホームレス状態だったのだ。何しろ、金銭感覚が皆無だったのだから仕方がない。
『ジュディ 虹の彼方に』(c) PATHÉ PRODUCTIONS LIMITED AND BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2019
映画の冒頭では、そんな元スターのうらぶれた姿が描かれる。いったい、誰が、なぜ、彼女をそうさせてしまったのか?疑問を解く鍵として提示されるのが、MGMの人気子役時代だ。ここでは、恐らく映画ファンがかつて見たことのない、ハリウッドのシビアな現実が露わになる。ロンドン時代の合間に挿入されるそれら子役時代の風景は、ホラー映画に近い衝撃がある。