低予算主義を守り抜く理由とは?
映画の世界はシビアだ。そう易々と奇跡を連発させてくれるわけではないし、一躍名を馳せたとしても、その後、あっという間に消えていく映画人も大勢いる。しかしこのジェイソン・ブラムというプロデューサーは別格のようだ。彼は『パラノーマル』で得た気流に乗って、なお一層のヒットを連発。作品を重ねるごとに方法論は強化され、低予算という枠内でも決して守りに入ることなく、攻め続ける姿勢が高い評価を受けている。このようなクリエイティブな好循環を維持する秘訣は一体何なのか?
これを理解するには、再び彼の「低予算論」へと立ち戻らなければなるまい。
彼のプロデュース作には予算が300~400万ドルのものが多い。観客の中には「ケチ臭い、守銭奴」と彼のことを誤解している人もいるだろうが、彼が低予算を守り抜いているのには理由がある。低予算に抑えることでプロデューサーが口を出す頻度を減らし、むしろその枠内で、監督が自由にのびのびと才能を発揮できるような環境を創出しているのだ。いわば低予算は信頼の証。『ゲット・アウト』のジョーダン・ピールが初監督作であれほど自分の持ち味を発揮できた理由もここにある。
『ゲット・アウト』(C)2017 UNIVERSAL STUDIOS All Rights Reserved
同時に、低予算であることは映画が不発だった時のリスクヘッジでもあり(負担も軽く、他の成功でカバーしやすい)、なおかつ、作り手が失敗を恐れず、常に常識をはみ出す “挑戦”を続けるための原動力にもなる。この製作姿勢はさながら「ベンチャー企業と投資家」の良好な関係性とも通ずるところがあろう。ブラムのもとで次々と大胆不敵なフランチャイズが生まれるのはそのためだ。