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『アウトサイダー』「ヤング・アダルト」の流行に乗り、「ブラット・パック」の原点に。

(c)Photofest / Getty Images

『アウトサイダー』「ヤング・アダルト」の流行に乗り、「ブラット・パック」の原点に。

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唐沢寿明のデビュー作品!?



 もうひとつ、『アウトサイダー』で多くの人の記憶に残っているのは、主題歌ではないか。スティーヴィー・ワンダーの「LIFE~ステイ・ゴールド」だ。日本では後にトヨタのCMでも使われ、人気が再燃した。


 この曲は『アウトサイダー』のために作られたもの。劇中に出てくるロバート・フロストの詩を基に、スティーヴィーが歌詞を書き、コッポラの父、カーマイン・コッポラが曲をつけた。青春の一瞬の輝きを愛おしむ歌詞と、切なくも美しいメロディ、スティーヴィーが奏でるハーモニカ……。これほどまで作品とぴったりな主題歌も、そうあるものではない。


 その「ステイ・ゴールド」をタイトルに、『アウトサイダー』の物語を舞台化した作品が、じつは日本に存在した。1987年、東京・銀座の博品館劇場で上演された「ボーイズレビュー  ステイ・ゴールド」だ。まだ無名の俳優やダンサーたちよる、宝塚のようなレビューと芝居の2部形式の舞台で、その芝居部分が『アウトサイダー』だった。もちろん「ステイ・ゴールド」も歌われた。


「ステイ・ゴールド」


 この舞台は、唐沢寿明の本格的な俳優デビュー作品でもある。唐沢の役は、映画ではラルフ・マッチオが演じたジョニー役に相当し、壮絶に死んでいくシーンは、今も記憶にやきついている。映画の『アウトサイダー』と同様に、日本のスターを発掘した舞台となったわけだ(その他、「ボーイズレビュー」には今井雅之や振付家の舘形比呂一らが出演していた)。


 映画『アウトサイダー』の公開時の上映時間は91分。これはスタジオ側の意向により、カットされたシーンが多くなった結果だ。当然のごとく、原作ファンからは不満が上がった。


 あるとき、孫娘が学校で原作を読み、友人たちと映画を観ようとしているのを聞いたコッポラは、彼女に完全なものを観てほしいと考え、ディレクターズカット版に着手したという。114分となるその『アウトサイダー』原作小説完全版』は、2005年、物語の舞台であるタルサでプレミア上映され、DVD化された。


 フランシス・フォード・コッポラ監督は、『アウトサイダー』の直後に、同じくS・E・ヒントン原作の『ランブルフィッシュ』を完成。次の『コットン・クラブ』(84)も含めて「コッポラYA三部作」とも言われたが、ハリウッドの歴史を刻んだこの巨匠が三部作の後に、映画ファンの心をつかむ大傑作を撮っていないことを考えると、一抹の寂しさを感じずにはいられないのである。



文:斉藤博昭

1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。



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