2020.05.21
常識の逆を行くストーリー作り
ジャッキーのストーリー作りは独特だ。彼はまず自分が撮りたい、演じたいと思うアクションシークエンスを考えるという。次にそのシークエンスをどう配置すれば一番効果的にアクションをみせられるか検討し、ストーリーを構築するのだ。
つまり、ジャッキーにとって映画のストーリーとは、アクションに付随する2次的なものであり、アクションを見せるための方便に過ぎないと言える。オーソドックスなアクション映画とは真逆の製作方法だが、だからこそジャッキー映画は映画史の中でも唯一無二の魅力を放っているのだろう。
『ポリス・ストーリー/香港国際警察』(C) 1993, 2004 STAR TV Filmed Entertainment (HK) Limited & STAR TV Filmed Entertainment Limited. All Rights Reserved.
本作の場合、ジャッキーには3つのアクションの構想があった。①急斜面を自動車が爆走する、②走行するバスにぶら下がる、③ショッピングモールでの格闘。実際に作中で実現したこれらのアクションシークエンスが素晴らしいのは言うまでもないが、特筆すべきは、それまでの作品にくらべ、アクション自体がより硬質なイメージになっていることだろう。
数メートル、時には10メート以上の高さから人間がアスファルトや硬い床に叩き付けられる様をワンカットで見せきる常軌を逸したスタントはいつも以上に徹底(俳優に骨折者が続出)。『プロジェクトA』と比較しても、ハードなアクションを志向していたことが伺える。
しかし、テンポの速いジャッキーアクションはあまりにも高密度。3つのアクションシークエンスはそのランニングタイムを合計しても10分ほどだ。
では3つのアクション以外をどんな要素で埋めるのか?それがスラップスティックなコメディシーンだ。