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『ゴーストバスターズ』84年全米興収7週連続No.1!社会現象まで巻き起こした徹底したリアル戦略とは
ヒットチャートNO.1を獲得した伝説的な主題歌
最後に、現実と映画の境界を鮮やかに突き崩したレイ・パーカー・Jr.による主題歌にも触れておきたい。そもそも一本の映画が既存曲ではなく、独自の主題歌を持つケースは極めて珍しいが、この試みは脚本・主演のハロルド・ライミスが提案する形で動き始めたものだった。
ライミスがイメージしたのは、昔のヒーロー物のテレビ番組のように、みんなでタイトルを叫んで盛り上がれるような主題歌。関係者から依頼を受けたレイ・パーカー・Jr.は、いったいどのやってこの「叫んで盛り上がるタイトル部分」を歌詞に落とし込むべきか大いに悩んだという。そしてアイディアが煮詰まってもうどうにもならなくなった午前4時半、テレビから天啓のように流れてきたのが、排管修理屋のローカルCM。その瞬間、彼の脳内には劇中で流れたバスターズの「困った時はお気軽にお電話を」のCMの記憶が鮮明に蘇り、そうだ、このノリを用いたコール&レスポンスにしよう!と見事に着地点が定まったそうだ。
もちろん、作戦は大成功。映画も週末興収No.1ならば、この主題歌もヒットチャートで首位を獲得。さらにMTVで幾度も流れるミュージック・ビデオには、主演の3人のみならず、ジョン・キャンディ、ダニー・デヴィート、ピーター・フォーク、チェビー・チェイスをはじめとする錚々たる役者陣が出演し、こちらも話題をさらった。
『Ray Parker Jr. - Ghostbusters』MV
ただし、いささかリアル過ぎる現実問題も付いて回った。ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の主題歌”The Power of Love”でもおなじみ)の” I Want a New Drug”に似ているとして、ヒューイ・ルイスから訴訟を起こされたのだ。なるほど、改めて聴き比べてみると確かに似ている・・・。結局、この訴訟は双方の話し合いによって和解が成立。それ以降は互いの楽曲について干渉し合わないことが確認されているという――――。
以上、見てきたように、本作が巻き起こした社会現象は、様々な次元にて仕掛けられた作り手のこだわりが、周到に連鎖反応を繰り返した末に得られたものだった。一本の映画が大化けしてスクリーンの向こう側とこちら側の境界線を消滅させていくダイナミズムを、当時の観客はさぞかし興奮しながら見つめていたことだろう。マシュマロマンのことを「荒唐無稽すぎるのではないか」と考えていた頃からは想像できないほどの荒唐無稽なリアルが、かくも壮大に、スタッフやキャスト、そして観客、ひいては社会全体を飲み込んでいったわけである。これぞ “現実のドミノ効果”の最たる成果と言えるのではないだろうか。
1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンⅡ』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。
『ゴーストバスターズ』 発売中
Blu-ray 2,381円(税別)/ DVD 1,410円(税別)
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
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