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『J・エドガー』ディカプリオがエキセントリックな“性格俳優”へと覚醒した記念碑的作品

(c)Photofest / Getty Images

『J・エドガー』ディカプリオがエキセントリックな“性格俳優”へと覚醒した記念碑的作品

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イーストウッドとディカプリオとの軋轢



 クリント・イーストウッドは、当初ジョン・エドガー・フーヴァー役には全く違う俳優を想定していたという。そりゃそうだろう。何せ、スーパーモデルのガールフレンドと一緒にいる姿をパパラッチされるような、今をときめくマネー・メイキング・スターである。四六時中怒鳴り散らしたり、男性と熱烈キスしたり、死んだ母親のドレスを着たり(その姿はまるで『サイコ』(60)のノーマン・ベイツのようだ)、スター俳優が演じるにはおよそふさわしくないキャラクター。しかしイーストウッドはディカプリオからの熱烈オファーを受けて、この難役を彼に割り当てることを決意する。


 意中の役をゲットしたディカプリオは、さっそくリサーチを開始した。フーヴァーと面識のある人物と会い、「彼はどんな風に歩いたか、どのように話したか、彼の机には何があったか」を根掘り葉掘り聞き出した。古い映像を掘り起こして、フーヴァーのスピーチの仕方を研究した。彼の生家や司法省にも赴いて、自分の中のジョン・エドガー・フーヴァー像を精密に創り上げていった。



『J・エドガー』(c)Photofest / Getty Images


 だが漏れ伝わる話によれば、撮影中のディカプリオとイーストウッドの関係は決して良好ではなかったという。ディカプリオは「フーヴァーとクライド・トルソンのあいだに、肉体関係があったことを具体的に描くべきなんじゃないか?」と主張したが、イーストウッドは「そんなものをわざわざ描く必要はない!」とにべなく却下。ニューヨークタイムズには、イーストウッドのこんなコメントが掲載されている。


 「明らかにここにはラブストーリーがあります。それがゲイのラブストーリーであろうとなかろうと、観客はそれを解釈することができます。私の意図は、お互いを愛している2人の男性を描くことでしたが、それ以上は私の仕事ではありません」


(ニューヨークタイムズの記事より抜粋)

https://www.nytimes.com/2011/11/06/movies/leonardo-dicaprio-in-clint-eastwoods-j-edgar.html


 それだけではない。完璧主義タイプのディカプリオが自分の演技に納得がいかずリテイクを要求したところ、イーストウッドは「ラップ(黙れ)!」と一喝。そのまま立ち去ってしまった。基本的にリハーサルをせず、ワンテイクで撮影を済ませてしまう老レジェンドにとって、ディカプリオの提案は一顧だに値しないものだったのである。



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