視覚効果のイノベーター、ロバート・ゼメキスが仕掛けた映像マジックの詳細
ヘレン(ゴールディ・ホーン)から整形外科医の婚約者、アーネスト(ブルース・ウィリス)を奪い去った女優のマデリーン(メリル・ストリープ)だったが、すでに2人の結婚生活は破綻している。おまけに、久しぶりに再会したヘレンは見違えるように若返っていた。
ある嵐の夜、若くてマッチョな愛人にまで見限られたマデリーンは、エステ会社の社長に紹介された謎の美女、リスル(イザベラ・ロッセリーニ)から、”永遠の美貌が手に入る”という秘薬を見せられ、なんとその場で一気飲みしてしまう。するとどうだろう。皺とシミだらけだった手は一瞬にして光り輝き、弛んだバストとヒップはぐっと上に持ち上がるではないか!? その際、リスルは「ただし、決して体を傷つけてはいけない」と警告するのだった。今更それ!?
(ここで、ゼメキスは特殊メイクとCGを使ってストリープの皮膚の変化を表現する一方で、アシスタントがストリープの影に隠れて空気入りブラジャーに息を吹き込み、一気に膨らませるというアナログ手法の両方を選択。)
自宅に戻ったマデリーンは、今は死体修復師を生業にしているアーネストを口汚く罵ったために、高い階段の上から突き落とされ、途中で何度かボキボキと音を立てて骨折を繰り返し、マリオネットのようになって階下で停止する。さすがに即死かと思いきや、やがて彼女は立ちあがり、首が捻れて頭は真後ろを向いたままよろよろと歩き始める。
(ストリープの頭が脱臼して逆向きになっているシーンでは、当初『エイリアン3』(92)や『ジュマンジ』(95)にも技術提供している特殊効果工房、Amalgamated Dynamics社のアニマトロニクスモデルと、ブルースクリーンのテクノロジー、そして、ストリープに施された特写メイクを合体させるという方法がとられる。が、その効果がイマイチだったため、最終的にはCGが使われることになった。)
『永遠に美しく…』(C) 1992 UNIVERSAL STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.
一方、アーネストを操ってマデリーン殺害計画を立てていたヘレンだったが、2人の計画を知ったマデリーンはショットガンでヘレンを一撃。ヘレンの体は宙を飛んで庭の池へ。ややあって、びしょ濡れになったヘレンはお腹の真ん中に銃弾の大きな穴を開けたまま、何事もなかったかのように蘇ってしまう。つまり、ヘレンもマデリーンと同じく、秘薬で永遠の若さを手に入れた代わりに、一旦その体が傷つくと、今度は永遠に死ねない悲しくも恐ろしい運命共同体となったのだった。
遂に直接対決を迎えた2人は、怒りに任せてシャベルを手に格闘。マデリーンの頭はシャベルで殴られた勢いで首の下に陥没してしまう。
(マデリーンが手早く首をリセットするシーンでも、映画史上初となるコンピューターで生成された皮膚の質感が効果を発揮している。)
その後、ヘレンはシャベルの柄をお腹の穴に通してソファに着席する。
(ILM、インダストリアル・ライト&マジックのVFX担当者は、シャベルの柄がヘレンのお腹に貫通しているように見えせるために、ILMが『ウィロー』(88)のために開発したモーフィング(ある物体が別の物体へと変化するように見せるSFXの一つ)を使って、監督の期待に応えている。)