ゼメキス&ローストンによる革命の歴史
結果、『永遠に美しく…』に於けるCG技術は、1993年の第65回アカデミー賞で視覚効果賞受賞という形で評価された。そこには、180度回転する頭や、被弾して大きな穴が開いたお腹など、それまでは使われなかった人間の皮膚感を初めてCGで再現したことへの、驚異と称賛の意味が込められていた。そして、ILMは『永遠に~』で達成した技術を、翌年の『ジュラシック・パーク』(93)に反映。CGの歴史にさらなる革命をもたらすことになる。
その礎を築いたのが、この分野の開拓者であるロバート・ゼメキスと、ゼメキスとは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)以来、常にコラボしているVFXスーパーバイザーのケン・ローストンだ。
『永遠に美しく…』(C) 1992 UNIVERSAL STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.
ここで、ゼメキスとローストンが起こした映像革命の歴史を簡単に紐解いてみたい。
アニメと実写の融合という画期的なイノベーションに挑んだ『ロジャー・ラビット』(88/ローストンと彼のチームがアカデミー視覚効果賞を受賞)。
ILMと協力して革新的なデジタル合成システムで、マイケル・J・フォックスが全て一人で演じる親兄弟が同じテーブルに着く『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』(89)。
デジタル合成により主人公がアメリカの歴代大統領やジョン・レノンと共演する『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94/ローストンたちがアカデミー視覚効果賞を受賞)。
地球の表面から宇宙を果てまでを、実写映画としては史上最長の3分間のプルバックCGショットで見せるオープニングが話題になった『コンタクト』(97)。
モーションキャプチャーをさらに進化させ、複数の俳優の顔や体の動きを一度に記録する技術を開発した『ポーラー・エクスプレス』(04)。
今は亡きツインタワーを精密に蘇らせた『ザ・ウォーク』(15)etc…。
改めて振り返ると、いかに世界中の映画ファンがゼメキスによる視覚革命の恩恵を受けてきたかがよくわかる。
そして、『永遠に美しく…』である。言い忘れたが、この映画には革命的なCGショット(肉)を突き刺すストーリー(串)自体にも、書き記すべき美の価値観が投影されている。1970年代後半のハリウッドを舞台に、美しくあり続けることの功罪を究極的に描いて、人々の中に潜む邪悪な願望を掘り起こしてくれるのだ。
だからこそ、当時批評家たちからは「哀れでグロテスクだ」と酷評されながらも、全世界で1億4,900万ドルの興収を叩き出し、その後もカルトムービーとしてかくも長く愛され続けるのだろう。
文 : 清藤秀人(きよとう ひでと)
アパレル業界から映画ライターに転身。映画com、ぴあ、J.COMマガジン、Tokyo Walker、Yahoo!ニュース個人"清藤秀人のシネマジム"等に定期的にレビューを執筆。著書にファッションの知識を生かした「オードリーに学ぶおしゃれ練習帳」(近代映画社刊)等。現在、BS10 スターチャンネルの映画情報番組「映画をもっと。」で解説を担当。
『永遠に美しく…』
DVD: 1,429 円+税
発売元: NBCユニバーサル・エンターテイメント
(C) 1992 UNIVERSAL STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.