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『ガープの世界』多様性を先取りし、人生の真理を伝える。俳優たちの才能も一気に開花させた傑作

©Photofest / Getty Images

『ガープの世界』多様性を先取りし、人生の真理を伝える。俳優たちの才能も一気に開花させた傑作

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ビートルズの曲が重なる人生賛歌とロビンの悲しい現実



 グレン・クローズが演じたジェニーの息子、T・S・ガープ、つまり本作の主人公を任されたのはロビン・ウィリアムズ。当初、『スーパーマン』のクリストファー・リーヴに打診されたが彼が断り、親友のウィリアムズに回ってきた。ウィリアムズは1951年生まれ。そしてグレン・クローズは1947年生まれ。つまり母と息子の年齢差が、わずか4歳というのも異例のキャスティングだった。クローズはガープの赤ん坊時代から登場するし、ウィリアムズはガープの十代から大人までの長い期間を演じるので、この年の差はあまり気にならない。


 ロビン・ウィリアムズが映画で最初に注目されたのは、『ポパイ』(80)のタイトルロールだったが、作品自体の評判はイマイチ。その翌年の『ガープの世界』こそ、彼のキャリアの最初の代表作になったと言っていい。その後、数々の当たり役を得て、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(97)でアカデミー賞助演男優賞を受賞したウィリアムズは、2014年、63歳で自ら命を絶った。『ガープの世界』ではオープニングとエンディングに、ビートルズの「ホエン・アイム・シックスティ・フォー」が流れる。「僕が64歳になっても、愛してくれるかい?」と恋人に語る歌詞だ。あと一年で、64歳になったはずのロビン・ウィリアムズのことを考え、改めて『ガープの世界』に接すると、その切なさは増す。


 『ガープの世界』© 1982 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.


 現実のウィリアムズは別にしても、『ガープの世界』のメインキャラクターの多くは早い時期にこの世を去り、64歳までの人生を想定したビートルズの曲には、皮肉な意味合いも感じ取ることができるだろう。しかし、だからと言って、彼らが不幸だったわけではない。「人間は死に到る患者」という『ガープの世界』の真理からすれば、彼らは波乱万丈に人生を「生ききった」幸せ者だという気がするのだ。



文: 斉藤博昭

1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。 



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『ガープの世界』デジタル配信中/DVD 1,572円(税込)

発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント

© 1982 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.

©Photofest / Getty Images

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