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『007/ノー・タイム・トゥー・ダイ』人間臭く、愛と絆に満ちたシリーズ最終章

© 2021 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.

『007/ノー・タイム・トゥー・ダイ』人間臭く、愛と絆に満ちたシリーズ最終章

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シリーズ全体を俯瞰した時に見えてくるもの



 『ノー・タイム・トゥ・ダイ』が繋がるのは、クレイグ主演の他の4本だけでなく、さらに時代を遡ったところで数々の007作品の記憶をも思い起こさせる。


 例えば、ジョージ・レーゼンビーがボンドを演じた唯一の作品『女王陛下の007』(69)。ボンドにとって珍しい純愛を描いた物語として、高い人気を持つ作品である。


 この中で、ボンドが運命の女性トレーシー(ダイアナ・リグ)と仲を深めるきっかけになったのは、彼女の父親であり裏世界の重要人物でもあるドラコだった。この男からボンドは「娘のことを頼む」と懇願され、その代わりにブロフェルドに関する有力情報を得る。最初はこういった取り引きから始まった関係性が徐々に深まり、最終的にボンドとトレーシー、二人は本気で惹かれあうのだ。


 一方、前作『007 スペクター』(15)では、状況は全く異なるものの、ミスター・ホワイトがボンドに「娘のことを守ってくれ」という交換条件でスペクターに関する手がかりを明かす。そうやって娘のマドレーヌとボンドは出会い、仲を深めていく。



『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ 』© 2021 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.


 これら両作の流れが微妙にシンクロしているところが興味深いし、物語の中で細菌兵器が登場するところも、いくらか踏襲しているのではないかと思えるほど。


 また、『ノー・タイム・トゥ・ダイ』オープニングにほとばしる”カラフルな円形デザイン”に見覚えのある方も多いはず。記念すべき映画版一作目『007/ドクター・ノオ』(62)でモーリス・ビンダーが手がけた伝説的タイトルバックがまさにこのカラフルな円形を用いたものだった。両作はジャマイカ(原作者イアン・フレミングはここの”ゴールデン・アイ”と呼ばれる別荘で007を誕生させた)が舞台のひとつとなっている点でも共通している。


 そういえば、『ノー・タイム・トゥ・ダイ』の「ノー」は「ドクター・ノー」(ストーリー上は関係ないが)を思い起こさせるし、なおかつ最新作の「能(NO)面の男」というイメージにも重なる。なんと時の流れがギュッと凝縮された秀逸なタイトルなのだろう。





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