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『007/ノー・タイム・トゥー・ダイ』人間臭く、愛と絆に満ちたシリーズ最終章

© 2021 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.

『007/ノー・タイム・トゥー・ダイ』人間臭く、愛と絆に満ちたシリーズ最終章

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人間臭くも、愛と絆に彩られた物語



 今回、キャリー・ジョージ・フクナガ監督が織りなすドラマやアクションも力強くて素晴らしければ、各場面を織りなすキャラクター描写も愛おしく仕上がった。全体的なバランスにも優れ、2時間44分という長さを全く感じさせない、本当に忘れがたく、離れがたい一作だ。


 クレイグとは『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(19)で共演したアナ・デ・アルマスとの息のあったコンビネーションや、スクリーンを席巻するラシャーナ・リンチの勇姿も痺れるほどかっこいい。


 一作目『ドクター・ノオ』から登場していたCIA諜報員、フィリックス・ライターも相変わらず飄々と渋い。それにM、マネーペニー、タナー、QといったMI6のレギュラーメンバーも家族同然の、実に安定感のある愛すべき人たちだ。こんな多様性の渦のごとき最高の仲間たちに囲まれながら、ジェームズ・ボンドはいま何を思うだろうか。



『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ 』© 2021 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.


 フィクションの世界では「スパイとは孤独で非情で危険な職業」とよく言われる。だがその第一人者であるはずのジェームズ・ボンドが、いちばん複雑な矛盾を抱えてしまっているのだから、やっぱり「007」シリーズは面白い。


 このクレイグ・ボンドの魅力に惹かれながら、改めて強く思った。これはとことん人間臭い男の物語であり、なおかつ愛と絆に満ちた物語でもあったのだとーーーー。


 月並みな言い方ではあるが、数々の逆境を乗り越えて本作を生み出したスタッフやキャストに限りない敬意したい。そして我々は、本作の逆境がいつの間にか世界全体が直面する逆境の写し鏡のようになっていった記憶を決して忘れることはないだろう。


 10年後、20年後、本作に触れるたびに、家族と会うことさえままならなかった「時の止まった1年半」を思い出し、様々なあり方、様々な次元で、この最高傑作を噛み締めることになるのかもしれない。


*1 https://www.radiotimes.com/movies/no-time-to-die-m-quotes-james-bond/


参考資料:「007号は二度死ぬ」(イアン・フレミング著/井上一夫訳/1964年)早川書店



文:牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンII』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。



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『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』

配給:東宝東和

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