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『女神の見えざる手』スピルバーグも興味を持った脚本を映画化、ヨーロッパの製作者陣が切り込むアメリカの銃規制

『女神の見えざる手』スピルバーグも興味を持った脚本を映画化、ヨーロッパの製作者陣が切り込むアメリカの銃規制

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ヨーロッパ人の鋭い視点が炙り出す、アメリカの銃規制が進まない闇



 ご存知のように、アメリカでは銃の保持については、「合衆国憲法修正第2条」の「規律ある民兵(ミリシア)は、自由な国家の安全にとって必要であり、武器を保有し携帯する人民の権利は、侵害されてはならない」という一文で、一般市民による銃器所有の正当化を認められている。ここ数年、アメリカでは社会に居場所をなくした者の苛立ちや、自身の現状への不満や失望を端にした無差別乱射事件が絶えず、その度に、世論から銃規制の声が高まるものの、それが進まない。それもこれも、この「修正第2条」を含む「合衆国憲法修正10カ条」が「合衆国憲法」の「人権」に関する「権利章典」であるからだ。つまり、銃の保持と携帯もまた、人権の権利であるという考え方である。


 とはいえ、この「修正第2条」が作られたのは1791年のことで、開拓時代の事情を2010年代の現在の社会にそっくり当てはめるのはおかしいという考えた方もある。特にオバマ前大統領は銃規制には積極的で、2012年のコネティカット州の小学校で起きた銃乱射事件の衝撃を受け、2013年には、全ての銃販売に身元チェックを義務づけると共に、軍隊で使うような襲撃用銃器や大量の弾丸を装填(そうてん)できる弾倉の販売を禁止する銃規制強化案を発表している。


 ところが、この強化案がすんなり通らない理由の一つに、銃規制に一貫して反対している全米ライフル協会(NRA)の存在がある。『女神の見えざる手』でジェシカ・チャステイン演じる凄腕ロビイスト、エリザベス・スローンに、銃保持のキャンペーンを依頼してくるのはチャック・シャマタ演じるビル・サンドフォードであるが、彼は銃擁護派団体の代表である。ちなみに、事務所の社長とともに、このサンドフォードから仕事を依頼された瞬間のジェシカ、「は?馬鹿じゃないの」と言わんばかりにプッと吹き出し、悪い冗談を聞いたかのように大笑いする。周囲が戸惑う中、引き受けるわけがないと啖呵を切って、その場で事務所をすっぱりやめてしまうからカッコいい。




 だが、銃擁護団体の力は強大で、銃規制法案を通す側の立場に立ったエリザベスにありとあらゆる仕掛けをもって、彼女を貶めようとしてくる。『女神の見えざる手』はこの騙し、騙されのコンゲームをスリル満点に描いたものだが、よくこれがイギリス・アメリカの合作で作れたなと感心してしまう。


 というのも映画の中の銃擁護団体のモデルと思われるNRAはハリウッドと関係が深く、『 ベン・ハー』によるオスカー俳優、チャールトン・ヘストンがこの団体の会長を5期勤めていたのは有名である。1999年に起きたコロンバイン高校銃乱射事件を契機に、アメリカでの銃保持に強く疑問を持ったドキュメンタリー作家、マイケル・ムーアは『 ボウリング・フォー・コロンバイン』でチャールトン・ヘストンにアポなし突撃取材を試み、彼を質問攻めにして、都合の悪い質問に対して、口ごもる姿を容赦なくカメラに収め、『 猿の惑星』を筆頭に、ヘストンの演技を愛してきた観客に様々な問題定義を施している。



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