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『女神の見えざる手』スピルバーグも興味を持った脚本を映画化、ヨーロッパの製作者陣が切り込むアメリカの銃規制

『女神の見えざる手』スピルバーグも興味を持った脚本を映画化、ヨーロッパの製作者陣が切り込むアメリカの銃規制

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ロビイストとは何をする仕事なのか?



 さて、『女神の見えざる手』は、今のアメリカが手をこまねいている「銃規制」の法案を実現しようとする女性ロビイストを題材にしていて、ある意味、アメリカにこういう人物が現れればいいなという現実とは遠い、希望を描いているともいえる。


 だが、ジェシカ・チャステイン演じるエリザベスは全然良い人としては描かれない。ジョン・マッデンは脚本に惚れ込んだ理由として、ヒロインが実に野心的で、品行方正な人物とは言い難いところを挙げている。映画の中で彼女は簡単に人を切り捨て、目的のためには、身内のスタッフの過去を暴き、その弱さを平気でマスコミに使い、利用もする。恋などする時間もないし、そもそも恋も愛も求めていない彼女は、性欲を満たすためだけにエスコートサービスを利用しているのだが、そういうプライベートが後々、敵側に突かれ、大きな危険を舞い込むことにもなってしまう。




 さて、そもそもロビイストとは何をする仕事なのか。


 ロビイストとは、ある特定の主張を有する個人または団体が、政府の政策に影響を及ぼすことを目的として行う、私的な政治活動であるロビー活動をする人のことをいう。ちなみに先にあげたNRAもロビー団体の一つである。日本では東京オリンピック誘致などでロビー活動についていろいろと注目されたが、あまりにも政治の場でロビイストの力が絶大であるがために、前オバマ大統領がロビイストを規制しようとしたのも有名な話である。まさか、銃規制に猛然と立ち上がるロビイストの映画ができるなんて、彼はどう思ったのか、聞いてみたい気もする。


 金融の街、ニューヨークにウォール街があるように、政治の街、ワシントンにはロビイストの事務所は立ち並ぶKストリートがある。ジェシカは現役のロビイストに何人もあってその話し方、立ち居振る舞い、思考の在り方など、徹底的に取材し、身に着けたという。現在、アメリカには3万人ものロビイストがいると言われるが、これまで映画の中には、影のフィクサーとして出てくることはあっても、ここまで表立って主役として描かれることはほとんどなかった。ロビイストがなぜ、そこまで強い力を持つかというと、企業からの献金を政治家に持ち掛け、巨額のやり取りを実現させるからである。個人による寄付で政治活動をしたオバマはそれをきらい、献金も厳しく禁止しようとしたが、トランプ大統領は逆にロビイストへの門戸をそれは広く大きく開けて、規制緩和にも積極的だ。


 もし、エリザベスが本当に存在していたら、「銃乱射を止めるのは銃」と言ってはばからないトランプ大統領に対してどう振舞うだろう? そんな夢想が止められない。



文: 金原由佳(きんばら・ゆか)

映画ジャーナリスト。「キネマ旬報」「装苑」「ケトル」「母の友」など多くの媒体で執筆中。著書に映画における少女性と暴力性について考察した『ブロークン・ガール』(フィルムアート社)がある。『90年代アメリカ映画100』(芸術新聞社)、『アジア映画の森 新世紀の映画地図』(作品社)などにも寄稿。ロングインタビュー・構成を担当した『アクターズ・ファイル 妻夫木聡』、『アクターズ・ファイル永瀬正敏』(共にキネマ旬報社)、『伝説の映画美術監督たち×種田陽平』(スペースシャワネットワーク)などがある。



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『女神の見えざる手』

DVD&Blu-ray発売中

DVD:3,900円 (税抜) /  ブルーレイ:4,800円 (税抜)

発売元:キノフィルムズ/木下グループ

販売元:ハピネット

(C)2016 EUROPACORP - FRANCE 2 CINEMA

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