2018.04.20
アドリブ推奨の現場だから生まれた、予測不可能なアランのキャラ
『ハングオーバー!』のプロットは、曲がりくねり脱線しまくってはいるが、粗筋だけを取り出せばいたってシンプルだ。独身さよならパーティーでラスベガスに繰り出した悪友たちが、行方不明になった花ムコを探して回る。ただし全員が極度の二日酔いで、花ムコがいつどこでいなくなったのかをまったく思い出せない。一体、一晩の間に何があったのかを探る設定が、ドタバタ劇に謎解きミステリーという側面を加えている。
どこにでもいる普通の男たちが、たまたまハメを外しすぎて珍騒動を巻き起こす、という図式は誰にとっても身近なものだが、そこに“享楽の街ラスベガス”という要素が加わると、事態が雪だるま式に悪化していく。つまり『ハングオーバー!』は、日常の延長のつもりが、いつの間にかある一線を越えていて、魔都ラスベガスに迷い込むダークファンタジーでもある。ただしラスベガスの場合は、ダークサイドの方が陽気で刺激に満ちあふれているわけだが。
魔都に迷い込む顔ぶれは、誰もが共感できる方がいい。だから主人公たちにはある種のステレオタイプが当てはめられている。行方不明になる花ムコのダグ(ジャスティン・バーサ)はチームの良心を象徴するナイスガイ。お調子者だがリーダー格のフィル(クーパー)、生真面目だけれどキレると豹変するスチュ(ヘルムズ)、そして天性のトラブルメイカー、アラン(ガリフィアナキス)……。
トッド・フィリップス監督は4人の仲間の中でも一番の奇人キャラを担うアランに関してガリフィアナキスと話し合い、「優しい人に意地悪で、意地悪な人に優しい」という性格付けを決めたと語っている。そしてアドリブや脚本にないアイデアが奨励される撮影現場で、ガリフィアナキスは極度に屈折した天邪鬼キャラをどんどん突き詰めていったのだという。結果、アランというキャラクターは、当初に想定されていた役割分担から大きくハミ出した。そして、その逸脱を面白がるフィリップス監督によって、『ハングオーバー!』と後に続くシリーズの方向性が定まったのではないかと筆者は推測する。