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『運び屋』自らの人生とフィルモグラフィで映画を再創造してみせた、イーストウッドのベスト盤!

『運び屋』自らの人生とフィルモグラフィで映画を再創造してみせた、イーストウッドのベスト盤!

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※2019年3月記事掲載時の情報です。


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88歳にしてカムバックした理由とは?  



 クリント・イーストウッドの監督・主演最新作『運び屋』はもちろん劇場で鑑賞するべき今年の最重要作であるが、彼はなぜ今になって、久しぶりに自らの姿をカメラの前にさらす気になったのだろうか。『グラントリノ』(08)では劇中で自らを葬り、そのまま俳優としては引退を宣言したはずだった。その後『人生の特等席』(12)には出演したものの、自作に出演する気配はなく、映画ファンたちは彼の雄姿をもう新作で拝むことはなかろうと諦めていた。


 それが、88歳にして突然のカムバックである。一体、なぜ?と訝ったが、内容を見てすぐに答えがわかった。「90歳の老人が麻薬カルテルの運び屋となった衝撃の実話」。つまりリアルにその年齢を演じられる俳優が自分以外にいなかったのだ。イーストウッドは『許されざる者』(92)で自分が主人公の老ガンマンを演じるに相応しい年になるまで、映画の製作を待ったという逸話があるほど自然体にこだわる。彼は老けメイクを施さず、自分がありのままの年齢で演じられる作品を探してきた映画人と言ってもよいかもしれない。




 今作の場合は、脚本家のニック・シェンクが最初からイーストウッドにあて書きしたようだが、まさに今現在の彼を切り取ることを目的にして作られたかのような作品だ。それゆえに『運び屋』はイーストウッドが役に自分を合わせていくのではなく、彼が自分に役を引き寄せる。つまり、作品が「彼を通してテーマを語る」のでなく、「彼自身がテーマとなって駆動する」、フィクショナルな映画としては逆説的な構造を備えることになった。



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