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『運び屋』自らの人生とフィルモグラフィで映画を再創造してみせた、イーストウッドのベスト盤!

『運び屋』自らの人生とフィルモグラフィで映画を再創造してみせた、イーストウッドのベスト盤!


現実とフィクションの垣根を取り去るキャスティング



 2006年の『父親たちの星条旗』あたりから、イースウッドは実話をベースにした作品に軸足を移した。『硫黄島からの手紙』(06)、『インビクタス/負けざる者たち』(09)、『Jエドガー』(11)、『ジャージー・ボーイズ』(14)、『アメリカン・スナイパー』(14)、『ハドソン川の奇跡』(16)は全て実話ベース。さらに列車内でのテロを未然に防いだ若者たちの実話を描いた『15時17分、パリ行き』(18)では主要な出演者を全て本人に演じさせるという「本人再現」を敢行、その徹底ぶりは「実験的」と言える領域にまで到達している。


 今回の『運び屋』で家庭を顧みなかったアールという老人を演じるイースウッド自身は、実生活では2回の結婚を経験し、子供が8人。妻以外にも交際した女性は数知れずという人で、自分自身が家庭を顧みてこなかったことを明らかに役柄に反映させている。


 さらにアールの娘役アイリスには実の娘アリソン・イーストウッドをキャスティングし、実の娘に自分を「ダメオヤジ」と罵倒させる、演技なのかどうかも疑わしくなる状況を作り出した。つまり役に自分を合わせるのではなく、自分に役を引き寄せてしまっているのだ。




 この「イースウッドそのもの」という要素が「土台」となり、これまでの自作のエッセンスを「柱」や「壁」として構築した『運び屋』という建造物は、アーティストが自身の過去のヒット曲を集めて生み出すベスト盤、つまり「ベスト・オブ・イーストウッド」とも呼べる作品と言えるだろう。


 「映画を監督するたび、演技をするたびに、何かを学ぶものだ。ストーリーを語り、それを演じ、冒険をし、問題を解決することによって……。そういうことすべてを通して、自分自身について何かの感覚、あるいは感情を抱き、実際の人生で自分がどうするかを考える。だからこそ、この仕事はとても魅力的なんだよ」




 彼にとって映画と実人生はシームレスで、お互いに良い意味での依存関係にあるのかもしれない。実人生をベースにフィクショナルな映画空間を構築し、それがまた実人生へと影響を与えていく。そんな映画と人生の往還関係をエンターテインメントに昇華させる稀有な作家が、この先一本でも多くの作品を撮り続けてくれることを願うばかりだ。



文: 稲垣哲也

TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)など。現在、ある著名マンガ家のドキュメンタリーを企画中。



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作品情報を見る



『運び屋』

その男、伝説の運び屋。3月8日(金)全国ロードショー

 (c)2018 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC


※2019年3月記事掲載時の情報です。

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