2018.12.21
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実際のロックフェスを数分だけ借りて撮影
ブラッドリー・クーパー初めての監督作となった『アリー/ スター誕生』。彼がこだわったのは、タイトルにもある「スター」となったミュージシャンの世界を徹底的にリアルに再現することだった。たとえば大観衆を前にしたライヴで、演じる側が感じる陶酔感の表現。そのために、監督のクーパーはミュージシャンの視点による映像を多用している。もともと彼が今作のイメージを膨らませたのは、2012年、メタリカのコンサートへ行った記憶だったという。クーパーが観たのはドラムの背後からで、そこからの視界が今回の監督作のインスピレーションになったのだ。そして『アリー/ スター誕生』で、ステージからとらえられた大観衆の姿も、CGではなく「本物」であることに、クーパーは執着した。
象徴的なのが、クーパー自身が演じるジャクソン・メインの冒頭のライヴシーンだ。映画の観客の心を一気につかむそのステージ・パフォーマンスは、2016年のステージコーチ音楽祭で撮影された。クーパーは、ジェイミー・ジョンソンとウィリー・ネルソンの出番の合間に短い時間を借り、8万人もの観客を前にステージに上がって1曲を披露。それを、ぶっつけ本番のように撮影したのだが、当日の観客がステージに立っているのが俳優のブラッドリー・クーパーだと認識できたのは、彼が歌い終わったあたりだったという。撮影に要した時間は、たった8分間。まさにゲリラ的である。