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『トリとロキタ』生きるために隠された感情、そして名誉

©LES FILMS DU FLEUVE - ARCHIPEL 35 - SAVAGE FILM - FRANCE 2 CINÉMA - VOO et Be tv - PROXIMUS - RTBF(Télévision belge)

『トリとロキタ』生きるために隠された感情、そして名誉

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冒険映画としての『トリとロキタ』



「(カメラが)キャラクターより先に進むことは絶対に避けたいということです。私たちは常にカメラがキャラクターより少し遅れることを望んでいます。キャラクターから少し遅れていることで、驚きが生まれ、存在することができるのです」*2


 ダルデンヌ兄弟の映画は唐突な始まり方をする。空間の説明描写を挿まず、登場人物がぶつかる出来事の渦中、あるいはその途中から始まることで、映画が唐突に始まるような印象を残す。『トリとロキタ』においては、ビザの審査を受けているロキタのアップから始まる。生き残るために嘘をつき、すぐに形成が不利になっていく過程がアップで捉えられている。ロキタの嘘がばれそうになり言葉を詰まらせる瞬間に、私たち観客の感情が映画に追いつく。その瞬間、観客は一部始終の目撃者となる。ダルデンヌ兄弟の映画の主人公たちは、観客が目撃者となることで、初めてその存在を浮かび上がらせる。



『トリとロキタ』©LES FILMS DU FLEUVE - ARCHIPEL 35 - SAVAGE FILM - FRANCE 2 CINÉMA - VOO et Be tv -  PROXIMUS - RTBF(Télévision belge)


 サヴァイブすることと犯罪がシームレスにつながっているように、本作にはサスペンス映画、そして冒険映画のようなジャンルを横断する仕掛けが施されている。機転の利く冷静さとエネルギッシュさを持ち合わせた少年であるトリは、『少年と自転車』(11)の主人公がそうだったように、すばしっこくスクリーンを駆けまわる。ベッドの下を凄いスピードでくぐり抜けていくトリ。ヌーヴェルヴァーグの諸作品におけるジャン=ピエール・レオのようにエネルギッシュなトリ。小回りの利くトリの運動神経のよさ、俊敏性が映画を豊かに彩っている。


 ロキタは偽造ビザを手に入れるために大麻の工場で働き始める。幽閉された状態にあるロキタに、トリが会いに行く一連のシーンが素晴らしい。スマホのライトを頼りに秘密工場に潜入するこのシーンには、冒険映画のような趣きがある。ロキタの周りを衛星のように動き回るトリ。そして一連の動きがついに止まった瞬間、登場人物が立ち止まった瞬間に、エモーションが浮かび上がる。ダルデンヌ兄弟の言葉でいうところの「連続性と非連続性」への賭け。立ち止まった瞬間に広がる沈黙や荒い息遣いの中にこそ、キャラクターの「存在」が浮かび上がる。




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