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『EO イーオー』愛する相手の元へ急ぐロバの習性を利用したポーランドの巨匠

© 2022 Skopia Film, Alien Films, Warmia-Masuria Film Fund/Centre for Education and Cultural Initiatives in Olsztyn, Podkarpackie Regional Film Fund, Strefa Kultury Wrocław, Polwell, Moderator Inwestycje, Veilo ALL RIGHTS RESERVED

『EO イーオー』愛する相手の元へ急ぐロバの習性を利用したポーランドの巨匠

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6頭のロバをキャスティングした理由



 しかし現実的に、映画の撮影でロバを使うことには苦労も多かった。EO役としてキャスティングされたのは、6頭のロバだった。メインで演じたのは、タコという名前の雄のロバ。スコリモフスキ監督が、候補となるロバの写真の中で最初に気に入ったのがタコであり、実際に会った瞬間にEO役への起用が決まった。「タコはすでにCM撮影などで“演技”経験があり、カメラや照明にも慣れていることが決め手になりました」とスコリモフスキは打ち明ける。


 現場ではロバの習性を生かすことで、撮影の進行がスムーズになったそうだ。「ほとんどのロバは雄と雌のパートナーとしての絆が強く、たとえばタコをA地点からB地点へ移動させるシーンでは、彼のパートナーにB地点で待っていてもらいます。そうすることで簡単に動いてくれるわけです」



『EO イーオー』© 2022 Skopia Film, Alien Films, Warmia-Masuria Film Fund/Centre for Education and Cultural Initiatives in Olsztyn, Podkarpackie Regional Film Fund, Strefa Kultury Wrocław, Polwell, Moderator Inwestycje, Veilo ALL RIGHTS RESERVED


 また、ロバはデリケートな面もあるという。「搬送には気を遣いました。動物園などに問い合わせをして、ロバを搬送するための特別な車を手配し、できるだけ揺れないように運転するのですが、それでも多少は車内が振動します。そうするとロバはストレスが溜まり、数十分の搬送で明らかに疲れ切った表情となり、撮影には使えなくなるのです。その場合は、行き先となるロケ地で別の雄と雌のカップルを見つけておく必要がありました。そのような事情から6頭のロバがキャスティングされたのです」とスコリモフスキ監督。


 映画を観るわれわれは、1頭がメインとはいえ、どこでロバが入れ替わっているかは、ほぼ区別できない。サーカス団でのパフォーマンスに始まり、ポーランドからイタリアへ至る怒涛の運命で、EOの瞳だけは一切変わらないからだ。変わらないからこ、その運命に切なさが増していくのも事実である。やはり、こうした瞳を持つロバのおかげで、本作のストーリーが結実したと言える。





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