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  4. トリロジー2作目はスパイ・サスペンス。奇才ハートリーが仕掛けた“カメラの傾き”がもたらすもの『フェイ・グリム』 
トリロジー2作目はスパイ・サスペンス。奇才ハートリーが仕掛けた“カメラの傾き”がもたらすもの『フェイ・グリム』 

トリロジー2作目はスパイ・サスペンス。奇才ハートリーが仕掛けた“カメラの傾き”がもたらすもの『フェイ・グリム』 

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前作から9年。変貌する世界、夫の行方を追うヒロイン 



 前作『 ヘンリー・フール』(97)から9年。久方ぶりのお目見えとなった続編『フェイ・グリム』(06)には、インディペンデントな映画作家ハル・ハートリーらしく、掟破りとも言えるアッといわせるような趣向が詰め込まれている。


 そもそも続編製作を決意した理由からして興味深い。ハートリー監督のインタビューによると、彼の中にはまず「また(フェイ・グリム役の)パーカー・ポージーと映画を撮りたい」という強い思いがあったという。そうした可能性を模索する中で、ハートリー監督とポージーの二人とも、前作のフェイの役柄をとても気に入っていたことから、このキャラクターをメインに据えた映画を撮ろうと決めたそうだ。さらに彼はその頃「9/11以降のおかしくなってしまった世の中についても語ろうとしていた」そうで、これら二つの要素が融合した結果、異色作『フェイ・グリム』の構想はいよいよ具体的に動き出していくこととなった。




 とはいえ、フェイ・グリムとは誰なんだ?トリロジーを2作目から鑑賞し始める人など滅多にいないと思うが、まずは復習の意味でも前作『ヘンリー・フール』のことを想起してもらいたい。そこには怪しげな男ヘンリーと、彼の文学指南を受けるサイモンと、さらにはサイモンの姉でありヘンリーの妻となるフェイ・グリムの存在が浮かんでくるはず。前作の最後ではそれぞれが別離をたどるかのような結末が待っていたが、あれから9年、事態は再び動き出す。皮肉的なのは「著作物」の価値の急騰である。前作であれほどクソミソにけなされ、出版社からは見向きもされなかったヘンリーの大著「告白」は、ここにきてその評価を一変させ、各国の情報機関がアレを手に入れようと熾烈な諜報戦を開始するのだ。


 一体、ヘンリーとは何者だったのか?妻さえ知らない夫の秘密がそこには隠されている。その真相に近づくべく、そして行方知れずの夫と再会すべく、妻フェイ・グリムは命がけのミッションに身を投じるのだが・・・。


 キャストには相変わらず同じ面子が顔をそろえる。あれから9年を経て、それぞれの俳優は歳を重ねて、表情や立ち居振る舞いにも適度な枯れ具合と悲哀が増した(一方で、演技に関しては熟練味が増している)。そして、ここで驚くべきことが判明する。なんと本作のジャンルは前作のヒューマンドラマから大きく跳躍し、なんと「スパイ・サスペンス」の様相へ変化を遂げているのだ。


 前作『ヘンリー・フール』を愛してやまない者としては、「なんだこれは!?」と目をこすりつつも、ハル・ハートリー監督が挑むこの素っ頓狂なプロジェクトにニヤリとせずにいられない。いつもこうやって観る者の3歩くらい先を歩んでいるのも、この監督の大いなる特徴だ。 



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