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  4. 映画と小説で楽しむ『海を駆ける』の世界 ※注!ネタバレ含みます。
映画と小説で楽しむ『海を駆ける』の世界 ※注!ネタバレ含みます。

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観てから読むか、読んでから観るか



 映画の公開に合わせて原作小説や漫画が増刷される光景は珍しいものではないが、オリジナル企画の作品でも、映画をもとにしたノベライズ、コミカライズが書店を賑わせている。個人的にそうしたものにまったく食指が動かないのは、ノベライズライターが映画の脚本をもとに書いたものに、作品的な価値を感じないせいでもある。それならば、かつての角川文庫のように脚本を文庫にして売ってくれる方が良い。


 あだしごとはさておき、ノベライズの世界が変わってきたのは、小説を書ける映画監督が現れたからでもある。「他人に任せてあとで文句を云いたくない、というただそれだけの理由で、自分が書く、と宣言した」と、青山真治は初の小説『ユリイカ EUREKA』(角川文庫)のあとがきで記したが、黒沢清、園子温、岩井俊二をはじめとして、自身のオリジナル企画を映画の公開に前後してノベライズに仕立てあげる監督が増えてきた。それも自らの文体を持つ監督たちが書いているだけあって、独立した小説として読むことができるので注目せざるを得ない。


 『文學界』(2018年4月号)に掲載された深田晃司の『海を駆ける』もまた、同名の映画と物語はほぼ同じ道を辿りながら、小説ならではの魅力を放つ。




 まずは映画に沿って話を進めると、インドネシアのスマトラ島北端に位置するアチェで、海から突如姿を現した男(ディーン・フジオカ)がいる。外見は日本人のようだが、記憶がないのか自らについて何も語らず、現地のNPOで働く貴子(鶴田真由)と息子のタカシ(太賀)のもとへ預けられることになる。貴子の家にはちょうど姪のサチコ(阿部純子)がやって来ることになっており、やがて彼女に恋するタカシの友人のクリス、そして彼の幼馴染でジャーナリスト志望のイルマを交えて、不思議な男の身元を探ることになる。



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