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映画と小説で楽しむ『海を駆ける』の世界 ※注!ネタバレ含みます。

© 2018 "The Man from the Sea" FILM PARTNERS

映画と小説で楽しむ『海を駆ける』の世界 ※注!ネタバレ含みます。

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『海を駆ける』あらすじ

日本からアチェに移住し、NPO法人で災害復興の仕事をしながら息子タカシ(太賀)と暮らす貴子(鶴田真由)。タカシの同級生のクリス(アディパティ・ドルケン)、その幼馴染でジャーナリスト志望のイルマ(セカール・サリ)が、貴子の家で取材をしている最中、その正体不明の日本人らしく男が発見されたとの連絡が入る。まもなく日本からやって来る親戚のサチコ(阿部純子)の出迎えをタカシに任せ、貴子は男の身元確認に急ぐ。記憶喪失ではないかと診断された男は、結局しばらく貴子が預かることになり、海で発見されたことから、インドネシア語で「海」を意味するラウと名付けられる。ほかには確かな手掛かりもなく、貴子とイルマを始め、タカシやクリス、サチコも、ラウの身元捜しに奔走することになる。片言の日本語やインドネシア語は話せるようだが、いつもただ静かに微笑んでるだけのラウ。その周りでは少しずつ不可思議な現象が起こり始めていた…。


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観てから読むか、読んでから観るか



 映画の公開に合わせて原作小説や漫画が増刷される光景は珍しいものではないが、オリジナル企画の作品でも、映画をもとにしたノベライズ、コミカライズが書店を賑わせている。個人的にそうしたものにまったく食指が動かないのは、ノベライズライターが映画の脚本をもとに書いたものに、作品的な価値を感じないせいでもある。それならば、かつての角川文庫のように脚本を文庫にして売ってくれる方が良い。


 あだしごとはさておき、ノベライズの世界が変わってきたのは、小説を書ける映画監督が現れたからでもある。「他人に任せてあとで文句を云いたくない、というただそれだけの理由で、自分が書く、と宣言した」と、青山真治は初の小説『ユリイカ EUREKA』(角川文庫)のあとがきで記したが、黒沢清、園子温、岩井俊二をはじめとして、自身のオリジナル企画を映画の公開に前後してノベライズに仕立てあげる監督が増えてきた。それも自らの文体を持つ監督たちが書いているだけあって、独立した小説として読むことができるので注目せざるを得ない。


 『文學界』(2018年4月号)に掲載された深田晃司の『海を駆ける』もまた、同名の映画と物語はほぼ同じ道を辿りながら、小説ならではの魅力を放つ。



『海を駆ける』© 2018 "The Man from the Sea" FILM PARTNERS


 まずは映画に沿って話を進めると、インドネシアのスマトラ島北端に位置するアチェで、海から突如姿を現した男(ディーン・フジオカ)がいる。外見は日本人のようだが、記憶がないのか自らについて何も語らず、現地のNPOで働く貴子(鶴田真由)と息子のタカシ(太賀)のもとへ預けられることになる。貴子の家にはちょうど姪のサチコ(阿部純子)がやって来ることになっており、やがて彼女に恋するタカシの友人のクリス、そして彼の幼馴染でジャーナリスト志望のイルマを交えて、不思議な男の身元を探ることになる。



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