(C)Possible Films, LLC.
『ネッド・ライフル』家族の物語、ついに完結。クラウドファンディングがもたらした最終章は、ユーモラスな中にギリシア悲劇的な香りが際立つ
ギリシア悲劇を思わせる「父殺し」というテーマ
また、本作ではハル・ハートリー映画の同窓会でも行うかのように、マーティン・ドノヴァン、ロバート・ジョン・バーク、カレン・サイラス、ビル・セイジという常連俳優たちが顔を揃えているのもファンにはたまらないところ。そうやって信頼出来る仲間たちに支えられながら、一方、物語の最前線にはフレッシュな若手を配置して作品を牽引させる。先述したリアム・エイケンと、これがハートリー作品初出演となるオーブリー・プラザの二人だ。
もともとハートリーの頭の中ではこの映画の構想として「18歳を迎えたネッドが、自分の家族をメチャクチャにした父ヘンリーを探し、復讐を果たそうとする」というおおよその流れが出来上がっていた。この「父との対決」「父殺し」というテーマはギリシア悲劇(「オイディプス王」)にも通じるものとして知られるが、近年の映画を俯瞰しても『 ゲド戦記』などで父王を殺害する主人公の姿が描かれていたのを思い出す。
『ネッド・ライフル』(C)Possible Films, LLC.
さらに映画史上で最も有名な同テーマを掲げる作品といえば、『 スター・ウォーズ』を置いて他にないだろう。この銀河絵巻を見つめると、やはりそこには家族をムチャクチャにした、ある意味、悪魔的なまでの力を放つ父の姿があり、ルークは自らも同じダークサイドに堕ちるかもしれないという不安や恐怖に抗いながら、最終的な父との対決に挑んで決着をつけようとする――――なるほど、こうやって受け止めると、全くジャンルの違うはずの『ヘンリー・フール』トリロジーのエッセンスも極めてよく似たものに思えてくるではないか。さながらここでのサイモンの立ち位置は“オビ=ワン”といったところだろうか。