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『Pearl パール』ペイント・イット・レッド!ペイント・イット・ブラッド!

© 2022 ORIGIN PICTURE SHOW LLC. All Rights Reserved.

『Pearl パール』ペイント・イット・レッド!ペイント・イット・ブラッド!

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ペイント・イット・レッド!



 『Pearl パール』を見た後、『X エックス』を是非見直してみてほしい。マキシーンとパールが頻繁に目を合わせるショットに改めて震撼するのを始め、細部という細部が補強、符合されていくのを感じることができる。「農場の娘たち」というタイトルの自主ポルノ映画。「ブロンドは嫌いなのよ」というパールの台詞の意味。パールとハワードが住む家でポルノ映画を撮ることの危険性。マキシーンが着用していたオーバーオール。ファーストショットの開いた納屋の扉に至るまで、きっと新たな発見があるはずだ。


 ダンサーを募集する教会でのオーディションで、パールは美しい深紅のドレスを身に纏う。パールの衣装はどんどん赤くなっていく。監督のタイ・ウェストによる赤い衣装へのこだわりは深い。闇夜に照らされる車のヘッドライトが血しぶきで赤く染まった前作の風景を想起させる。パールの纏っていた白いドレスは、殺人を犯すごとに血で赤く染まっていった。同じように本作のパールは、呪術的な祈祷に身を捧ぐように赤色に染まっていく。もっと赤く!深すぎるくらいに赤く!ペイント・イット・レッド!ペイント・イット・ブラッド!



『Pearl パール』© 2022 ORIGIN PICTURE SHOW LLC. All Rights Reserved.


 ミア・ゴスは、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(00)のビョークや『何がジェーンに起こったか?』(62)のベティ・デイヴィスを参考にしたという。案山子の被っていた黒いハットを被り、メリー・ポピンズのような装いになる陽気なパールの姿も、ハリウッドの作り出した“健全な”魔法やファンタジーを再文脈化するという意味において興味深い。


 教会でのオーディションで、パールは「X」の目印がついた位置に立ちダンスを披露する。パールは「未知の可能性(Xファクター)」の舞台に立つ。ミア・ゴスのパフォーマンスの躁と鬱の両極の魂の行方に、映画はよりフォーカスしていく。そして見たこともないようなラストショットで両極の魂は結合される。詳細は省くが、パール=ミア・ゴスは歴史に残るような“パフォーマンス”を披露している。自身の“パフォーマンス”が世界中に愛されることを望んでいたパールという役に捧げられた、ミア・ゴスからの真摯な恩返しだ。シリーズが伝説になることを確信させてくれるような本作のラストショットは、世界中の観客から感嘆をもって迎えられるだろう。パール=ミア・ゴスの“パフォーマンス”を愛さずにはいられない!



文:宮代大嗣(maplecat-eve)

映画批評。「レオス・カラックス 映画を彷徨うひと」、ユリイカ「ウェス・アンダーソン特集」、リアルサウンド、装苑、otocoto、松本俊夫特集パンフレット等に論評を寄稿。




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『Pearl パール』

絶賛上映中

配給:ハピネットファントム・スタジオ

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