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『X エックス』タイ・ウェスト監督 伝統的ホラー映画の仮面をまとった野心作、そのテーマは「映画作りへの情熱」【Director’s Interview Vol.221】
1979年、ポルノ映画の撮影隊がロケで訪れたテキサスの片田舎。そこで暮らす年老いた夫婦は実は殺人鬼だった。恐怖の高齢殺人夫婦が若者たちを一人一人血祭りにあげていく—。これだけの情報で、ホラーファンならあの名作が思い浮かびニヤリとするにちがいない。しかし『X エックス』はそんな映画ファンの予想と期待を小気味よく裏切ってくれる野心作だ。本作にはこれまでのホラー映画にはなかったユニークなテーマ性と視点があり、それが数多あるスラッシャー映画とは全く違った読後感を提供してくれる。
製作の経緯や、斬新なテーマ性、さらにコロナ禍での撮影を乗り切った驚きの方法を監督のタイ・ウェストに語ってもらった。
Index
「映画作り」へのラブレター
Q:『X エックス』には様々なホラー映画のエッセンスがつまっています。特にトビー・フーパー監督の『悪魔のいけにえ』(74)や『悪魔の沼』(76)からの影響を強く感じました。本作は過去のホラー映画のエッセンスを散りばめるだけではなく、それらを解体し、監督なりに再構築しようという強い意志を感じます。
ウェスト:おっしゃるように『X エックス』には『悪魔のいけにえ』の要素が強く感じられると思います。でも舞台が70年代のテキサスで、若者たちがバンに乗って旅行するという設定にすると、どうしても似てしまいますね(笑)。だから、前半を観て『悪魔のいけにえ』のような映画を期待した観客に対し、全く違う方向に映画を展開させて意表を突こうと意識しました。
私は70年代のホラー映画が大好きですが、ホラーに限らず当時のアメリカ映画すべてのジャンルのファンなんです。だから全体を通して70年代のアメリカ映画のトーンを意識しました。私は映画作りそのものも大好きで、この映画自体が映画製作へのラブレターだと考えています。だから単なるホラー映画ではないんです。
『X エックス』© 2022 OVER THE HILL PICTURES LLC ALL RIGHTS RESERVED.
Q:主人公たちが、インディペンデントのポルノ映画を製作するためにテキサスの田舎に向かうという設定がユニークですね。
ウェスト:70年代のポルノ映画はポルノでありながら、ストーリーをしっかり組み立てている作品が多いので、映画作りの醍醐味を感じられるジャンルだと思います。ホラーとポルノは、アウトサイダー的な表現という意味で、似ている部分があると感じます。ハリウッドの大手スタジオの製作システムに組み込まれず、インディペンデントで自由に作れるジャンルだと思うんです。そういった親和性から、登場人物たちをポルノ映画の製作者にしました。