1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. 悪魔の追跡
  4. 『悪魔の追跡』70年代に産み落とされた、カー・アクション+オカルトの悪魔合体
『悪魔の追跡』70年代に産み落とされた、カー・アクション+オカルトの悪魔合体

© 1975 Twentieth Century Fox Film Corporation. Renewed 2003 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

『悪魔の追跡』70年代に産み落とされた、カー・アクション+オカルトの悪魔合体

PAGES


『ローズマリーの赤ちゃん』と同趣の<四面楚歌映画>



 『悪魔の追跡』は、キャンピングカーで休暇に出かけたフランク(ウォーレン・オーツ)&アリス(ロレッタ・スウィット)、ロジャー(ピーター・フォンダ)&ケリー(ララ・パーカー)の二組の夫婦が、悪魔崇拝カルト集団の儀式を偶然見かけてしまったことから、ひたすら彼らに追われる羽目になる話である。まさしく、悪魔が地の底まで追跡するのだ。怖いったらありゃしない。


 しかしながら、残酷レベルはだいぶ甘口にチューニング。全裸の女性が生贄となる人身御供のシーンは、燃え盛る炎が直接描写を周到に覆い隠しているし、キャンピングカーにガラガラヘビが現れてパニックになるシーンも、スキーのストックでグサグサ突き刺そうとするだけ。スラッシャーというよりは、『エクソシスト』(73)、『オーメン』(76)に近いオカルト映画的テイスト。カー・アクションとオカルトを、文字通り悪魔合体させてしまったのである。アメリカ西部をキャンピングカーで横断するロードムービー的要素もあるから、カー・アクション+オカルト+ロードムービーの、3ジャンル・ハイブリッドと言えるかもしれない。どんだけ欲張りなんだ。



『悪魔の追跡』© 1975 Twentieth Century Fox Film Corporation. Renewed 2003 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.


 筆者が構造的に最も近いと感じたのが、『ローズマリーの赤ちゃん』(68)。言わずと知れた、巨匠ロマン・ポランスキーによるホラー映画の金字塔だ。夫のガイ(ジョン・カサヴェテス)と一緒に、ニューヨークのアパートに引っ越してきた身重の妻ローズマリー(ミア・ファロー)。だが周りは怪しげな人物ばかりで、彼らは悪魔崇拝者なのではないか?と次第に疑念を深めていく。そして気が付けば、彼女は袋小路に入り込んでしまっていた…というのが大まかなアウトライン。


 『悪魔の追跡』でも、主人公たちはカルト教団からの執拗な嫌がらせに心身ともに疲弊してしまい、旅先で出会う人々はみんな悪魔崇拝者なのではないか?と疑心暗鬼にかられてしまう。カルト教団の勢力は想像以上に巨大で、どんなに逃げても脱出不可能なシチュエーションに陥っていた、というお話だ。


 片やアパートの屋内、片やアメリカを横断する屋外という違いはあれど、どちらも「カルト信者によって逃げ口を塞がれてしまった、四面楚歌映画」。密室劇になれば必然的にホラー成分が増すし、屋外劇になれば必然的にアクション成分が増す。ロケーションの差によって手触りは異なるものの、実は『ローズマリーの赤ちゃん』と同趣の構造を有しているのだ。




PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. 悪魔の追跡
  4. 『悪魔の追跡』70年代に産み落とされた、カー・アクション+オカルトの悪魔合体