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『悪魔の追跡』70年代に産み落とされた、カー・アクション+オカルトの悪魔合体

© 1975 Twentieth Century Fox Film Corporation. Renewed 2003 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

『悪魔の追跡』70年代に産み落とされた、カー・アクション+オカルトの悪魔合体

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『悪魔の追跡』あらすじ

楽しい休暇を過ごすために、自ら設計した夢のキャンピング・カーで人生最高の旅に出た二組の夫婦。初日、河原で一夜を過ごすことになったのだが、川の向こう岸に突如燃え上がる炎を目撃。すると、覆面姿の異様な面々が呪文を唱え、いきなり女性が胸を刺された!自分の目を疑った夫婦たちは急いで車を発進させたが、そこからとんでもない連中に追われるはめになるのだった…。


Index


ハイブリッド映画の偉大な先行例



 70年代は、スラッシャー映画が狂い咲いた時代だった。『鮮血の美学』(72)、『悪魔のいけにえ』(74)、『暗闇にベルが鳴る』(74)、『ハロウィン』(78)。無差別な殺人、吹き上がる血しぶき。タイ・ウェスト監督の『X エックス』(22)は、あからさまにこの時代のスラッシャー・ムービーをフィーチャーした作品だった。そして70年代は、スティーブ・マックイーン主演『ブリット』(68)を嚆矢として、カー・アクション映画が隆盛を誇った時代でもある。『激突!』(71)、『バニシング in 60"』(74)、『トランザム7000』(77)、『ザ・ドライバー』(78)。残酷で野蛮な<B級映画的なるもの>が、市民権を獲得していった時代と言えるかもしれない。


 クエンティン・タランティーノの『デス・プルーフ in グラインドハウス』(07)は、まさにスラッシャー映画とカー・アクション映画にオマージュを捧げた作品と言える。殺人鬼と女性スタントマンたちの激闘!驚愕のカー・アクション!ヒャッホー!現代最強のオタク監督から届けられた、古き良きB級映画へのラブレター。タランティーノは「好きなスラッシャー映画は?」というインタビュアーの質問に対して、こんな風に答えている。


「この映画はスラッシャー映画とカーチェイス映画のハイブリッドだから、それぞれ1つずつ挙げよう。この手のカーチェイス映画でベンチマークしているのは、『バニシング・ポイント』(71)。スラッシャー映画としては、もちろん『ハロウィン』が大好きだよ。でも時間が経つにつれて、『血のバレンタイン』(81)が一番好きになっているかもしれないな」(*)



『悪魔の追跡』© 1975 Twentieth Century Fox Film Corporation. Renewed 2003 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.


 そう、『デス・プルーフ in グラインドハウス』は“ハイブリッド映画”なのだ。異なるジャンルを一本の映画としてマッシュアップしてしまう、ある意味でヒップホップ的な、ある意味で節操のない手法。そしてタランティーノよりもはるか前に、<正体不明の殺人鬼に追いかけられ>、<派手なカーアクションが炸裂する>、ハイブリッド映画の偉大な…いや、偉大であるかどうかは正直よく分からんが…先行例がある。ジャック・スターレット監督による伝説のカルト映画、『悪魔の追跡』(75)だ。


 もちろんタランティーノは、『デス・プルーフ in グラインドハウス』を制作するにあたって、この『悪魔の追跡』も参照していただろうが、一般的にはかなり知名度は低い。ロッテントマトをチェックしても、トマトメーター(批評家によるスコア)が64%、オーディエンス・スコアが55%だから、決して高評価な訳ではない。映画としてだいぶ雑味があることも否めないだろう。だが筆者は、何故だかこの作品に心惹かれてしまっている。大味なB級エンターテインメントに、「これぞ映画ナリ!」という静かな興奮を覚えている。


 そんなカルト作品が、初公開から48年の時を経て再びリバイバル公開された。これを僥倖と呼ばずして何と言おう。




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